２−１ 当日、某イベントにて。 ページ3
「…よし！」
即売会当日。リストに書いておいたサークルさんを回りきり、やっと俺は肩の力を抜くことが出来た。
やっぱり男である俺が同人誌を買いに行くとびっくりしたような顔を向けられることはあったが、お宝の確保と引き換えにしたら安いものだ。
お目当てのサークルさんの本は全て買えたし、あとはもう帰ってもいいのだが、それはなんだか名残惜しい気がする。
俺が知らないだけで、素晴らしい話を生み出している人もいるかもしれないからだ。イベントには。
「じゃ、一周してみようかな…」
そう独り言を呟き、俺はお宝を抱えて足の向きを変えた。
しかし、本当に人が多い。女性向けイベントだから腐男子はそこそこ人目を集める。でも、実はイベントの空気感も、俺は結構好きだったりする。それもあって毎回会場に出向くことにしているのだ。。…まあ、最初は恥ずかしかったけど。
そう思い出に浸りながら会場内を歩いていると、ひとつのスペースに目がとまった。
若い女の人、いや、女の子、と言った方がいいかもしれない。そんな子が、一人でにこにこしながら座っていた。
チョーカーを身に着け、ロングスカートにパステルカラーのカーディガン。明るめの茶髪を、一本に縛った髪型だった。
「おっとり」と形容するに相応しい格好で、彼女はそこに座っていた。
サークル名を確認しようとして、テーブル上のポスターに目を走らせる。
『雨と虹。』
そんな文字がゴシック体で印刷されていた。
聞いたことがないサークルだった。
しかし、ポスターに描かれていたのは、俺の推しCPだったのだ。
それなら、一度見て見ないといけない。そう思って、俺はそのスペースに向かった。
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