＊prologue ページ1
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その日は、雪が降っていた。
マフラーに顔を埋めながら、私はゆっくり歩いていた。
寒さでツンとする鼻はきっと赤くなっているだろう。
___なにしてるんだろ。
気が付いたら無意識に、閉店間際のケーキ屋さんの中に入っていて。
ショーウィンドウに並べられた余り物の数個のケーキを見て、喉が熱くなる。
ケーキなんか買っても意味なんて無いのに。
それでも、現実を受け止めたくはなくて。
今までみたいに普通の人生を送りたくて。
普通の人間でいたくて。
『すみません、チョコレートケーキを１つください』
「え...」
思わず声が出てしまって、ラストのチョコレートケーキを頼んだ学ラン姿の男の子が私を見る。
『あ...すみません。
もしかしてチョコレートケーキ頼むつもりでしたか？』
「あ、いや...大丈夫、です」
そうだよ。
どうせ誕生日ケーキなんか買ったって私の未来は変わらない。
あの日から私の未来は、永遠なんだ___。
結局、何も買わないでケーキ屋を出た。
せめて誕生日気分でも味わいたかったのに。
そうしたら未来は変わったのかもしれないのに。
そんな希望は無意味だったと痛いほど実感した。
吐いた息は白く、一瞬で空に馴染んだ。
この息みたいに永遠なんていらないのに。
舞い降りた雪も、肌に触れたら溶けた。
まるで、はじめからなかったみたいに。
私だけが。
私だけが、違う。
私だけが、永遠なんだ___。
_____『永遠を誓おう。』
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作者名：心音. | 作成日時：2018年6月18日 20時
