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ぴたって空気が止まって、短い沈黙が流れる保健室の中。
美香｢なんで、あの子なの……｣
さっきまでとは違う、まるで男の子みたいな低い声。………女の人ってこわい。
好きな人のためなら、何するかわかんないよ。
深澤｢んーなんでだろ…………かわいいじゃん。
翔太の後ろちょこちょこ引っついてる感じとかさ。｣
美香｢…………｣
深澤｢にこにこーって笑うでしょあの子。
それもたまんないね。
ずーっと見てられる。ははっ｣
姿すら見えていないのに、美香さんの中にふつふつと湧き上がる怒りははっきりとわかるの。
もう寝転ぶ気力もなくなっちゃったベッドで、
布団をぎゅう…って握りしめて。なかなか終わることのない２人の会話をずっと聞いてた。
…………ねぇ深澤くん。そんな素直にわたしを思ってくれて、わたしはお兄ちゃんが好きって言ったら、びっくりするかな。
肩落としちゃうかな、って。
応えられない想いに胸が痛くなるの。
深澤｢で、誰なの？さっき言ってた、邪魔な人って｣
美香｢…………んー、辰哉くんの知らない人、かな｣
深澤｢ふーん。負けないように、がんばんなきゃね？｣
｢うん｣って明るくみせた返事も、いろんな思いがこもってて、すっごく怖いの。
だってさっき言ってた。彼女になるって。
何されるのかな……
わたしはやっぱり間違ってる……、
お兄ちゃんが好きなんておかしい。それが初恋なんてやっぱりおかしい。
早いうちに諦めたほうがいい？
もう近づかないようにしたほうがいい？
美香｢……がんばる。今日も会うから。｣
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作者名：恋 | 作成日時：2021年7月20日 1時
