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何回も何回も唇が食べられて、隙間に漏れる吐息が、まるで自分のものじゃないみたいに思えた。
翔太｢…………へったくそ。｣
｢…ん、だって………｣
したことないんだよ。ずっと逃げてきた道なんだもん。だってお兄ちゃんが好きだった。
お兄ちゃんに、キスしてほしかった。
すって唇を離して、息が切れているわたしの
ブラウスに手をかけて、器用にボタンをはずしていくお兄ちゃん。
ひとつ、ふたつ、はずした瞬間………
｢…………、？｣
突然、その手がぴたって止まる。
眉のところにシワを寄せて、苦しそうな、余裕のなさそうな、そんな顔。あんまり見たことない顔。
翔太｢…………すっげ、悪いことしてる気分。｣
手の甲で、わたしの首にぴたって触れて、
どれだけ熱いか確認してる。
翔太｢熱あっから、あんま頭回ってねーんだろ？｣
｢……ちが、｣
翔太｢そういうことにしとけ。………な？｣
つらそうに、何かを我慢するように、唇を噛みしめるお兄ちゃんの表情が、もっと苦しくさせる。
さっきみたいに近づいてきて、唇に触れることを覚悟したって、もう触れてはくれなくて。
わたしのおでこに自分のおでこをごつんってして、お熱高いかなぁって、きっと見てるだけ。
それだけでこんなに、ドキドキして、きゅんってしてるの………知らないでしょ。
翔太｢……………だめだな、こんなの。｣
かすれた声が耳に残って、それは終わった。何がだめなんだろう。
風邪引いてる、熱のある人を、抱くこと？
それとも、
……………妹を抱くこと？
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作者名：恋 | 作成日時：2021年7月20日 1時
