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｢さっむ………｣
いい天気だし、ぽかぽかしてるのに
肌はぶるぶるって震えてる。
…………おかしいな、いつもより１枚多く着込んで家を出たのに。
｢ねぇ、｣
風邪でも引いたかな。
ずずって鼻をすするけど、
気づかなかったことにしようって目をつぶる。
いつもより遠いな、学校………
｢ねぇ、聞いてんの？｣
薄々感じてた、すっごく苛立った声。やっぱり………わたしに向けられたものだったんだ。
｢………はい、｣
｢あんたさ、渡辺A？｣
どきり、と胸が鳴る。
振り返ったそこにいたのは、腕組みをしてる
きれいな女の人。制服の気崩しからしてきっと
３年生。なんでわたしの………
そう思う前に、ぴんときたその顔。
…………あんまり、出会いたくなかった人だ。
昨日お兄ちゃんと一緒にいた、っていうかキスしてた、その女の人。
美香｢翔太の妹でしょ、あんた｣
｢………あの、｣
美香｢あんたに邪魔されてんのよ、わたしたち。｣
怖い顔。きゅ、と濃いめに引かれたアイラインが印象的。ぱちっと大きな目が、
わたしを睨みつけて。
なんか、………嫌われてる。
美香｢あんたが邪魔なの。翔太のこと、
解放してあげてくんないかな。｣
｢……あの、｣
美香｢翔太が好きなの。
どうしても彼女になりたいの。
あんたがいなきゃ、とっくになれてるのよ…………｣
ごくり、とつばを飲みこむ。
なんにも出てこないんだもん。怖くて、ドキドキが止まらなくて、しゃべれない…………
美香｢なんとか言いなさいよ。あたし嫌いなの。
いつまでもお兄ちゃんにしがみついてる妹とか。｣
｢…………、｣
美香｢翔太だって、シスコンもいいところよね。…………ばかみたい、｣
そう吐き捨てて、
風のように去っていく美香さん。
長い髪をなびかせて、お姉さんって感じ。
なんにも言えないままだったこの数分間。
なんだか………お兄ちゃんを奪われた気分だった。
｢……っくしょん、｣
なんとなく寂しくて、
ずず、って鼻をすすった。
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作者名：恋 | 作成日時：2021年7月20日 1時
