月下美人【青】 (ページ30)

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膝の上に座ったって、
いないみたいに話すんだから、もういやになる。

スマホとは逆の手で、握りしめられたまんまの
缶ジュース。………ソーダにしたんだね。

それをきゅって掴んで奪いとって、お兄ちゃんに差し出したら、ん？って顔で見つめられる。

少し伸びた前髪が目にかかるのか、時々人差し指で流す、その仕草が最近多くて、

わたしがどきってする回数も多い。

｢…………のむの。｣

翔太｢あ？自分で持ってこいよ、まだ冷蔵庫に｣

｢あけて。｣

…ったく、って舌打ちする姿すらも、かっこいいって思っちゃう。

ん、ってわたしが差し出しつづけたジュースを
やっと受けとってくれたお兄ちゃんは、

耳と肩で器用にスマホをはさんで

めんどくさそうにプシュ、って缶を開けてくれる。

……うれしいの。

こんな小さなことで、すっごく。

ごくり、とソーダに口をつけるわたしを、
不思議そうに見つめてくる。２口くらい飲んで、お兄ちゃんに渡して。

もういらないって子どもみたいなことする。

翔太｢もういいの？｣

｢ん、もういい。｣

あっそう、ってジュースを受けとって、何事もなかったみたいに飲み始めるお兄ちゃん。

今話してる女の子、妹抱っこしてるなんて知ったら、びっくりしちゃうね。

でもこんなに引っ付いてるけど、
今日はきらいなの。

首筋にみえる赤い跡を指で触りながら、
ひたすら電話が終わるのを待った。

｢ねぇ、わたしのこと好き？｣

そんなかわいらしい声が向こうから聞こえる。

はぁ、ってため息つかないであげて。

なんて思ってたら、

翔太｢ん、じゃーな。おやすみ｣

めずらしくお兄ちゃんが、強引に電話を切った。