月下美人【青】 (ページ28)

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ほら、もうこんな時間。

素直に帰ってくるはずなんてなくて。

………がちゃ、って聞きなれた音を立ててリビングのドアが開いたのは、もう日付が変わった頃。

翔太｢あ？もうついたよ家。うん、｣

ちらりと目が合うけれど、
一瞬にして逸らしてしまうのはわたしのほう。

だって……、いやでも思い出しちゃうんだよ。

昼間見たお兄ちゃんの顔。女の子にキスする、
すっごいかっこいい横顔。

耳にスマホを当てながら、
荷物をどさって床におろして。

もちろん首にはないネクタイも、
はずれてるボタンも、

あの時お兄ちゃんが何をしてたか、
ひとつひとつ物語ってるから……、

制服を脱いでその辺にぽいってして、
グレーのパーカーを羽織って、
冷蔵庫で缶ジュースを選んでる背中。

翔太｢いつまで言うんだよ。だーから無理だって、｣

翔太｢あはは、それは我慢して。うん、｣

笑ってる。女の子と電話楽しい？………こっち見てるし。わたしがチラチラ気にしてるの、気づいてるからかな。

だってさっき見えちゃった。キスだけでもやだったのに、そういう証拠残してこないでほしい。

大っ嫌いなお兄ちゃんの首筋に見えた、女の子のしわざ。

そういうの付けるやつ嫌いって、前言ってたのに。………結局何でもいいんじゃん。