月下美人【青】 (ページ12)

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「………、｣

すっごい入りにくい。

なんだか悪いことしてるような気分にさせられるんだもん。

どうして学年が違うだけで、

こんなに雰囲気も変わって、視線とかそういうのが…………

｢あっ、Aちゃんだぁ。｣

お兄ちゃんのクラスの前でうろうろして、入ろうかな、誰かに声かけてもらおうかな、って下唇ばっかり噛みしめてたその時。

｢ねぇ、Aちゃん来てるよー｣

こちらに向けてくれる、その柔らかい笑顔がもう天使に見えてしまうくらい。

彼は、のぞき込むように声をかけてくれて。

教室のはじっこからは

あ？って聞き慣れた声。

｢なんかさ、緊張してない？｣

｢そ、りゃ…………先輩の、クラスだから…｣

｢ふはは、なにそれ。かわいー｣

ほっぺをつまんで、むにむにってする癖。

初めはよじって逃げてたけど、

彼のほんわかしたペースに飲まれて、いつのまにか慣れちゃってるわたし。

彼は、深澤辰哉くん。

お兄ちゃんと同じクラスの。

すごくモテるらしい。

深澤｢出てきてあげなって。緊張するんだってよ？ここ来んの。｣

教室のすみっこでスマホをいじってるお兄ちゃんの、腕を引いてきてくれる深澤くん。

翔太｢何、｣

だるそうな声。

片手でイヤホンをはずす仕草。

それだけで、どきってする………