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康二「あ、ふっかさん、いーもん食べてる！
いっこちょーだい！」
撮影の合間にやってきた康二の左耳には
もちろん
あの日のイヤーカフがしっかり収まっている。
それかっこいいじゃん、って
褒めてあげようかと思ったけど
なんか悔しいから、やめた。
深澤「やーだよ！
これは俺がもらったもんなの！」
康二「えー？、けちやん！」
お前にはそのイヤーカフがあるんだから
いいだろ、
なんて、言えるわけがない。
康二「ん、あ、これAが好きな店！」
クッキーのパッケージ、
模様みたいに描かれたその店の名前。
深澤「そ、なんだ…？」
康二「そうそう。
でもちょっと高いから、
特別なときに買うんだって言ってた。」
へぇ。
特別なとき、に…かぁ。
深澤「………。 なぁ康二、Aちゃんにさ、」
康二「ん？」
深澤「…これおいしいね、って言っといて。」
康二「ええけど…、なに急に？(笑)
ふっかさん、変なの(笑)」
変…だよな。
そう。変なんだ、俺。
たぶんきっと、あの日から。
深澤「それからさ…！」
康二「うん？」
深澤「 ‘俺も好きだ’！！！
…って。
言っといて。」
伝われ。
いや、伝わるな。
こんな、戦にもならない
ダサい宣戦布告。
一瞬、きょとんとしたあと
「そんなにおいしかったの？そのクッキー」
って笑った康二。
だって、ほら。
ちゃんと伝わってなかったことに
ほっとしたりしてるんだもん、俺。
康二「やっぱり一個ちょうだいっ！」
深澤「だからやだっつってんだろ！(笑)」
こうやってじゃれてくる康二のことだって
俺は大好きだから。
この気持ちに名前をつける前に
いまはそーっと
見て見ないふり、
しておこうと思う。
_おしまい
.
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作者名：恋 | 作成日時：2021年5月17日 22時
