残された時間 ページ45
「準備はいいか？」
ローレンスさんの部屋の前でギャリーが立ち止まる。
「うん、当たって砕ける」
「砕ける前に何とかしてやる……行くぞ」
・
・
・
「俺はトーマスという少年と取引したはずだが？」
バラの香りに包まれた部屋で、ローレンスさんの冷めた声が空気を裂いた。
「あの少年が怖気づいたというなら、取引は不成立となる。誠に残念だが……」
ローレンスさんの手から、握り潰されたバラの花弁が乾いた音を立てながら落ちる。
「トーマスの代理として来ました。貴方に時間を与える方法を知っています」
彼は私を探ってる。だから、怖がっている素振りを見せたらダメだ。
コツ、コツと杖を鳴らしながらローレンスさんが近づいてくる。
先程のトーマスへの距離感を見ていたから心構えをしたけど、彼はそこまで近づかずに立ち止まった。
「その方法を教えてもらえるかな？お嬢さん」
「これです。中に薬が入っています」
私はヴィンスからもらったネックレスからカプセルを取り出した。
「……これは？」
「ブリスという麻酔薬です。この薬を飲めば、っ！」
ローレンスさんの付き人が私に向けて銃口を構える。あっという間に距離を詰められた。
「待ってください！考えがあるはずです！」
声を上げたのはギャリーだった。彼の腕がまるで私を庇うように前に出る。
こんな時に不謹慎だけど、ギャリーじゃないみたい。彼は変わった。
ローレンスさんが右手を上げると、付き人の男性が銃を下げた。
「……いいだろう、ギャリーに免じて続きを聞こうか。その前に１つ聞いておきたいんだが、君はそれがどんなに危険な物かわかっているのかね？」
「この薬を飲むと超越的になります。普通の程度を超える言動の危険性が問題視され、禁止薬になったと聞きました」
メアリーさんからヴィンスに渡されたブリス。私は彼がメアリーさんから説明されたこの薬の効能を教えられた。
「フレアによって起こる認知破壊を、ブリスなら脳機能をスローダウンさせる為、正気を失うまでの時間を長引かせることができます。市民には手に入れられないほど高価な薬……
私たちがWCKDに侵入し、血清を奪うまでの担保にしてください」
「……つまり、友人を助ける手助けをしろ、ということか。
ブリスがあれば、狂っていようが平気な顔してシティで人間らしい生活ができる。だがシティの外はどうなる？
奴らは研究の為だと抜かし、俺たちから全てを奪った。これ以上好きにさせない」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 72人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
灰(プロフ) - risaさん» コメントありがとうございます。その複雑な感情、私にとっては最高の褒め言葉です。嬉しいですね、何度も読み直しています。応援してくれてありがとうございます。これからも一緒にメイズランナーを見届けてもらえたら幸せです。 (2022年8月5日 18時) (
レス) id: d11b046bc6 (このIDを非表示/違反報告)
risa(プロフ) - 完結まで頑張ってほしいけど終わってほしくない…！というという複雑な感情です笑頑張ってください！ (2022年8月5日 11時) (レス) @page47 id: 154610999c (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - 金魚さん» 金魚さん！また読みに来てもらえて嬉しいです！そしてコメントも残してくれて、本当にありがとうございます！メイズランナーの世界を一緒に楽しみましょう！私のことまで気遣ってくれて、私は幸せ者です。ありがとうございます。 (2022年7月21日 19時) (レス) id: d11b046bc6 (このIDを非表示/違反報告)
金魚 - 更新ありがとうございます！やっぱりこの作品が好きなのでとても嬉しいです！！続きを楽しみにしておりますが、灰さんのペースで楽しんで書けることを願っています！ (2022年7月21日 12時) (レス) id: 60316f025e (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - 猫魔さん» コメントありがとうございます。長らくお待たせしてしまい申し訳ありません。私には恐れ多いお褒めの言葉をありがとうございます。胸にしっかり刻んで今後の更新に繋げていけたらと思います。また遊びに来てくれたら嬉しいです。 (2022年7月13日 11時) (レス) id: d11b046bc6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：灰 | 作成日時：2020年9月24日 16時
