新しい人体実験[no side] ページ41
「準備OKだ」
男性が研究中のテレサを呼びにくる。
彼女は弾む鼓動を表に出さないよう抑えながら、研究室の一室に向かった。
研究室の一角、強化ガラスの中に実験用のクランクが暴れている。
奥には少女が１人、寝かされていた。
「シャイ」
シャイと呼ばれた少女は、ぐったりとしながらも真っ赤に充血した目を向ける。免疫を持たない子どもの感染者だ。
「テレサ先生」
「どうも、気分はどう？」
「まあまあ」
骨と皮だけの少女の腕を取り、消毒液を塗ったテレサは注射器を受け取る。
「それでよくなるの？」
テレサが持つ血清を見て、少女は虚な目をした。
「そう願ってる。この間話してくれたこと覚えてる？貴方のお家のこと」
「もう忘れた」
「湖のほとりの家」
テレサが血清を打ち込む。
少女は痙攣を起こしたように震え始めた。
「熱いよ……熱い」
「我慢してね。はい、終わりよ」
少女がゆっくりと目を開ける。誰もが少女を注視していた。
息を飲む緊張感の中、充血していた少女の目は白味を帯び、顔に浮き出た赤黒い血管が薄くなっていく。
安堵と喜びに包まれる中、テレサが少女の手を握った。
「気分はどう？」
「……私、どうなったの？」
「鏡を見せてあげるわ」
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ジャンソンは嬉々とした表情でエヴァの隣に立った。ガラスの向こうにはテレサと楽しそうに談笑するシャイがいる。
「ああ、素晴らしい。他の感染者への投与はいつから？」
興奮しているジャンソンを横目で見たエヴァの表情は穏やかだが、冷めているようにも見える。
「群衆への発砲を命じた人間とは思えない発言ね」
「任務を果たしたまでです」
「……本当に、果たしていて？パトロールの報告だと、トーマスは見つかってない」
「そのこと、彼女は知ってます？」
ジャンソンの言う彼女とはテレサのことだ。エヴァはテレサを見つめると、静かに首を横に振る。
「いえ、知らせない。仕事に集中させないと。
シティ全域の警戒レベルを上げなさい。務めを果たしてくれることを祈るわ」
「わかりました、トーマスと一緒にあの子も捕獲しましょう。では失礼します」
ジャンソンが頭を下げて去っていく。
「……第１段階はクリアね。でも、まだ油断ならない」
エヴァはテレサたちを見つめながら呟くと、後ろにあった棚からファイルを１冊取り出す。
「……彼女たちを見てると、貴方を思い出すわ」
そのファイルには、幼い頃のAの写真が貼ってあった。
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灰(プロフ) - risaさん» コメントありがとうございます。その複雑な感情、私にとっては最高の褒め言葉です。嬉しいですね、何度も読み直しています。応援してくれてありがとうございます。これからも一緒にメイズランナーを見届けてもらえたら幸せです。 (2022年8月5日 18時) (
レス) id: d11b046bc6 (このIDを非表示/違反報告)
risa(プロフ) - 完結まで頑張ってほしいけど終わってほしくない…！というという複雑な感情です笑頑張ってください！ (2022年8月5日 11時) (レス) @page47 id: 154610999c (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - 金魚さん» 金魚さん！また読みに来てもらえて嬉しいです！そしてコメントも残してくれて、本当にありがとうございます！メイズランナーの世界を一緒に楽しみましょう！私のことまで気遣ってくれて、私は幸せ者です。ありがとうございます。 (2022年7月21日 19時) (レス) id: d11b046bc6 (このIDを非表示/違反報告)
金魚 - 更新ありがとうございます！やっぱりこの作品が好きなのでとても嬉しいです！！続きを楽しみにしておりますが、灰さんのペースで楽しんで書けることを願っています！ (2022年7月21日 12時) (レス) id: 60316f025e (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - 猫魔さん» コメントありがとうございます。長らくお待たせしてしまい申し訳ありません。私には恐れ多いお褒めの言葉をありがとうございます。胸にしっかり刻んで今後の更新に繋げていけたらと思います。また遊びに来てくれたら嬉しいです。 (2022年7月13日 11時) (レス) id: d11b046bc6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灰 | 作成日時：2020年9月24日 16時
