再び、壁の中を目指して ページ31
「よく頑張ったな。ギリギリ間に合ってよかったぜ」
運転するホルヘの声は心なしか嬉しそう。
助手席に座っているブレンダが後ろを振り返り、トーマスをじっと見つめる。
「……君らを巻き込みたくなかった」
トーマスの言葉に、ブレンダは不満そうにホルヘと私を見る。すると１番後ろで私の隣に座っていたフライパンが身を乗り出した。
「こいつが言いたいのは、助けてくれてありがとうってことだ」
機転を効かせたフライパンに、ブレンダがどういたしまして、と微笑んだ。
「高望みするなよ、さっきの検問所がシティへの最後の砦だった。そこがあのザマだ、シティも終わってるかも」
「他にクランクを閉め出す方法を見つけたら別だろ？」
ニュートの言葉に、皆で車を降りる。
目を見張る光景に息を呑んだ。
四方を囲んだ壁の中に、シティがあった。今まで見てきた砂漠や荒野の世界とは違う、まるでそこだけ別次元のように存在している。
「皮肉だな。高い壁に囲まれて３年、逃げ出そうと必死だったのに──」
ニュートが呟く。
「入ろうとしてる」
フライパンが口にした。
「どうやって入る？」
トーマスがホルヘに訊ねる。
「俺に聞くな。前にはなかった。あの壁こそがWCKDの正体だ」
「WCKDの正体……」
ホルヘの言葉を繰り返す。私たちが相手にしようとしてる敵の強大さに少し足が震えた。
WCKDの全てがあそこにある。
ミンホもいるはず。そして、テレサも──
「眺めていても答えは出ないわ。行きましょう」
ブレンダがそう言って車に戻っていくのを見て、私も車に乗り込んだ。
ニュートとトーマスはシティを見ながら話しているようだ。
「A、どうして彼と話さないの？」
「え？」
驚いてブレンダを見れば、彼女は助手席から私をじっと見てる。
吸い込まれそうな瞳を前にしたら、誤魔化せる気がしない。
「……わからない。話そうと思うけど、避けられてるような気もする」
彼の後ろ姿ばかり見つめて、振り向きそうになったら目を逸らす。その繰り返しだ。
「怒ってるのかもしれない。私が言うことを聞かなかったから」
「それはないと思うぜ。逆にAが怒ってると思ってるかもしれないけどなぁ」
「だそうよ？」
「……うぅん」
そのとき運転席のドアが開きホルヘが乗り込む。フロントミラー越しに目が合った。
「なんだ、べそっかき饅頭になってるのか」
「はは、いいあだ名だな」
ああ、フライパンにまで。
「もう、ホルヘ！」
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灰(プロフ) - risaさん» コメントありがとうございます。その複雑な感情、私にとっては最高の褒め言葉です。嬉しいですね、何度も読み直しています。応援してくれてありがとうございます。これからも一緒にメイズランナーを見届けてもらえたら幸せです。 (2022年8月5日 18時) (
レス) id: d11b046bc6 (このIDを非表示/違反報告)
risa(プロフ) - 完結まで頑張ってほしいけど終わってほしくない…！というという複雑な感情です笑頑張ってください！ (2022年8月5日 11時) (レス) @page47 id: 154610999c (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - 金魚さん» 金魚さん！また読みに来てもらえて嬉しいです！そしてコメントも残してくれて、本当にありがとうございます！メイズランナーの世界を一緒に楽しみましょう！私のことまで気遣ってくれて、私は幸せ者です。ありがとうございます。 (2022年7月21日 19時) (レス) id: d11b046bc6 (このIDを非表示/違反報告)
金魚 - 更新ありがとうございます！やっぱりこの作品が好きなのでとても嬉しいです！！続きを楽しみにしておりますが、灰さんのペースで楽しんで書けることを願っています！ (2022年7月21日 12時) (レス) id: 60316f025e (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - 猫魔さん» コメントありがとうございます。長らくお待たせしてしまい申し訳ありません。私には恐れ多いお褒めの言葉をありがとうございます。胸にしっかり刻んで今後の更新に繋げていけたらと思います。また遊びに来てくれたら嬉しいです。 (2022年7月13日 11時) (レス) id: d11b046bc6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灰 | 作成日時：2020年9月24日 16時
