正論と正義[ニュート] ページ24
「１週間？ここまで来るのに６ヶ月経った。今ここには１００人以上いる。いつまでもここにはいられない。何があるかわからない所にいくのか？」
トーマスの計画を聞いたヴィンスは、真っ向から反対した。
「俺が知ってる」
静寂を破ったのはホルヘだった。
「何年も前になるがそこにいたことがある。ラストシティ。WCKDはそう呼んでた。そこに奴らの作戦本部がある。
もし、まだあるのなら──行かない方がいい。危険だぞ。ライオンの巣だ」
ホルヘは目をぎらつかせながら脅すようにトーマスを見た。
トーマスは彼の視線に怯まずに口を開く。
「どこだろうと怖くない」
「そんな問題じゃないだろ。貨車襲撃は上手くいったが、あれは奇襲だったからだ。だが奴らはこの先待ち構えている」
トーマスの言葉を遮ったヴィンスの声色はだんだん激しくなっていく。
「考えてる。最後まで聞いてくれ」
「この間のことをもう忘れたのか？不意をつかれて俺は──っ！全てを失った。
ミンホのことは心配だろう。だがここは大勢の子どもたちがいる。たった１人のために、危険には晒せない」
ヴィンスとホルヘ、２人の言い分は正論だ。
それに築いてきた物を、大切な仲間を一瞬で失う喪失感を、僕らも痛いほど知ってる。
──区画を捜索開始
そのとき、無線傍受をしていたラジオが声を拾った。
──セッションＡ完了、セッションＢにうつる
嫌な予感がしてすぐ、ヘリの音が聞こえた。
「っくそ、明かりを！」
トーマスの言葉にホルヘがブレーカーを落とし、僕らは急いで消しに向かう。
「WCKDだ！明かりを消せ！」
駆け込んできた僕に、子どもたちは悲鳴を上げて物陰に隠れ、逃げ惑う。
「静かに！落ち着いて、息を潜めるんだ」
彼らに声をかけながら、僕は空を見上げた。
暗闇をライトで照らしながら、２機のバーグが旋回している。やはり僕らが近くにいることを見抜いていた。
状況からみて、１週間もここに滞在するのは不可能だろう。ヴィンスも２日後だった予定を繰り上げ、早く移動するかもしれない。
現実的にトーマスがやろうとしている計画は無謀だと僕も思う。
ただ、やろうとするならこの計画しかない。
大人２人に説き伏せられる形となったトーマスは、黙り込んでしまった。
でも、彼がそこで諦めるような奴じゃないことは誰よりもわかってるつもりだ。なら、僕の答えも決まってる。
静けさと暗闇を取り戻した空、僕は今日の夜を耐え切れるだろうか。
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灰(プロフ) - risaさん» コメントありがとうございます。その複雑な感情、私にとっては最高の褒め言葉です。嬉しいですね、何度も読み直しています。応援してくれてありがとうございます。これからも一緒にメイズランナーを見届けてもらえたら幸せです。 (2022年8月5日 18時) (
レス) id: d11b046bc6 (このIDを非表示/違反報告)
risa(プロフ) - 完結まで頑張ってほしいけど終わってほしくない…！というという複雑な感情です笑頑張ってください！ (2022年8月5日 11時) (レス) @page47 id: 154610999c (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - 金魚さん» 金魚さん！また読みに来てもらえて嬉しいです！そしてコメントも残してくれて、本当にありがとうございます！メイズランナーの世界を一緒に楽しみましょう！私のことまで気遣ってくれて、私は幸せ者です。ありがとうございます。 (2022年7月21日 19時) (レス) id: d11b046bc6 (このIDを非表示/違反報告)
金魚 - 更新ありがとうございます！やっぱりこの作品が好きなのでとても嬉しいです！！続きを楽しみにしておりますが、灰さんのペースで楽しんで書けることを願っています！ (2022年7月21日 12時) (レス) id: 60316f025e (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - 猫魔さん» コメントありがとうございます。長らくお待たせしてしまい申し訳ありません。私には恐れ多いお褒めの言葉をありがとうございます。胸にしっかり刻んで今後の更新に繋げていけたらと思います。また遊びに来てくれたら嬉しいです。 (2022年7月13日 11時) (レス) id: d11b046bc6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灰 | 作成日時：2020年9月24日 16時
