リーダー[ミンホ] ページ45
１人で探しに出たトーマスを追って行けば、ドーム型の天窓がある広い空間に出た。
壊れた窓から月日が差し込んで、薄らと明るい。
何か物資を、と思って懐中電灯で照らしながら進むが、用途すら推測できないほど破れた布きれや埃の被った物ばかりで手を伸ばす気にはなれなかった。
俺達はWCKDの敵と思われる
不確かなその情報だけが頼りだ。決して楽観視できる現状でないことは、恐らく全員が分かっているだろう。
「なあ、トーマス。施設に残してきた奴らのことだが」
前を歩くトーマスの背を追う。
食い物もベットも服も用意され、お膳立てされたような生活はグレードにいた頃よりは遙かに快適だが。
「俺は、ああはなりたくない」
あの未来に待っているのは、生きている感覚もない無の世界だ。そんなの、メイズをくぐり抜けた俺達の生き方じゃない。
返事のないトーマスを見れば、あいつは俺の覚悟なんて聞こえていないかのように壊れた配線のコードを眺めていた。
「おい」
その横顔に懐中電灯を向ければ、トーマスはハッとしたように俺の方を向く。
「わかってるよな？」
トーマスの目に不安の色が浮かんでいるのを感じながら、俺は確かめるように目を合わせた。
誰も表立って言わないが、今、俺達のリーダーは紛れもなくトーマスだ。
俺達はきっと、何があってもお前に着いていくことになる。
「ああ、わかってる」
「よし……ここで何を探してる？」
「人の痕跡だ。誰か、生き残っていないか」
トーマスの話に耳を傾けながら、辺りを照らしたときだった。
ソファーの背もたれに見えたのは、人の頭部だった。
「彼がそうか？」
隣に立ったトーマスも俺と同じ方向を照らす。
じりじりと近づいてみれば、それは確かに人だったが袋を頭から被って既に息絶えていた。
「…くそ」
悔しそうにトーマスが呟く。だが、俺は死体のそばに置いてある電気スタンドが気になった。
スタンドのスイッチを押してみると、カチ、カチと音が鳴る。
「電気が通ってる」
トーマスと目を合わせ辺りを見渡す。地面にはきちんと繋がれたままの配線があり、それは奥へと続いていた。
配線を辿って奥へと進んでいく。
扉を抜けると、全ての配線が繋がれた電子機器が置いてあった。
「まだ使えそうだ」
OFFになっているスイッチを入れていく。
「ミンホ、待て！」
叫び声が聞こえたのは、俺が最後のスイッチをONにした瞬間だった。
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灰(プロフ) - ゆかりさん» ゆかりさん、コメントありがとうございます。私には勿体ない言葉ばかりで恐縮ですが、とても嬉しいです。パワーが漲って参ります！更新を再開しましたので、ぜひこれからも遊びに来ていただけると嬉しいです。コメントを残してくださり、本当にありがとうございました。 (2019年5月13日 21時) (
レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - ふわりんさん» ふわりんさん、コメントありがとうございます。そして、とても遅い返信になってしまい申し訳ありませんでした。久しぶりにここへ来てコメントを発見し、とても申し訳ないとともに、有り難い気持ちで一杯になりました。本当に励みになります、これからまた頑張ります！ (2019年5月13日 21時) (レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり(プロフ) - はじめまして、いつも素敵なお話をありがとうございます！私もメイズランナーが大好きなのですが、灰さんの書かれるお話が面白くて更新を楽しみにしています(^^)背景描写やキャラの心理状態の書き方が丁寧で読みやすくて引き込まれます！これからも応援してます(^^) (2019年5月12日 23時) (レス) id: 6d37aeb524 (このIDを非表示/違反報告)
ふわりん - 初めまして♪この作品の更新をいつも楽しみにしてます！これからも更新頑張ってください。応援してます♪ (2019年4月22日 18時) (レス) id: 17d42863df (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - Hatomuraさん» コメントありがとうございます。おお、私もなんです。全３部作と聞いたので公開が終わるまで待っていたのですが、もっと早く見れば良かったと後悔しました(ノД`)そう言っていただけて、書いて良かったなと思えます。ゆっくりペースですが、これからも更新頑張ります！ (2019年4月11日 21時) (レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灰 | 作成日時：2019年3月26日 19時
