取り戻した記憶[トーマス] ページ4
──テレサ、なぜこんなことを？
──WCKDは悪よ
──僕のせいか？
──死ぬのを見ていられない
──トーマス、ありがとう
「────、ねえ、」
夢と現実の狭間で聞こえた声に僕は目を開けた。
「大丈夫？」
僕を見下ろすテレサは、記憶の中の彼女よりも疲れていて髪もボサボサだった。
でも、僕をまっすぐ見つめるその青い瞳は、記憶の中と同じで僕を心配しているのがわかった。
「無茶なことを」
頭上で聞こえたチャックの声に弾かれたように身を起こせば、チャックの他にもニュート、ミンホ、Aが覗いていた。
「何があった」
僕は、彼らに訊ねた。
グリーバーの注射器を打つ前、ギャリーが吠えていた記憶で僕の意識は途絶えている。
ニュートが代表するように口を開いた。
「ギャリーがボスに。選択を迫ってる。彼らにつくか君と追放されるか」
まだギャリーはここに留まることに固執してるのか。
チェンジングによる身体の後遺症は想像以上だった。
筋肉と関節が痛くてなんとか踏ん張って立ち上がろうとしたけど、とてもじゃないが無理だった。
僕は檻の壁に背中を預けるようにして座り直した。
「皆、彼の側に？」
「ギャリーは全て貴方のせいだと」
テレサが僕を見つめて言う。
記憶が戻った今、それがギャリーの被害妄想だとは言えなかった。
「それは当たってる」
「どういうことだ？」
ミンホが目を細めながら僕を見下ろしている。
言いづらいけど、言わなくてはいけない。彼らには知る義務がある。
「ここは僕らが思ってる場所じゃない。監獄じゃなく、実験場だ。幼少期から始まった。彼らは僕らに試練を与え、人体実験をしてきた。次々送り込まれた。毎月決まって１人ずつ」
「メイズにか」
訊ねるニュートに僕は頷いた。
「だが、皆じゃない」
そう告げたとき、僕は喉の渇きを急に覚えた。
「どういう意味だ？」
ニュートが訊ねてくる。
彼らが僕をどう思うのか怖くなった、でもそんな思いは自分勝手だと戒める。
「僕は彼らの１人だ。君らをここに送った彼らの。僕は君らを長年見てきた。君らがここにいる間、彼らの側にいた────君もだ。君も彼らの側なんだ」
僕はテレサを見つめた。
彼女の青い瞳には今にもこぼれ落ちそうな程涙が溜まっているのが見えた。
「嘘よ……ありえない」
テレサの目から、溢れた涙が零れ落ちる。
「本当だ、この目で見た。そして──」
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灰(プロフ) - ゆかりさん» ゆかりさん、コメントありがとうございます。私には勿体ない言葉ばかりで恐縮ですが、とても嬉しいです。パワーが漲って参ります！更新を再開しましたので、ぜひこれからも遊びに来ていただけると嬉しいです。コメントを残してくださり、本当にありがとうございました。 (2019年5月13日 21時) (
レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - ふわりんさん» ふわりんさん、コメントありがとうございます。そして、とても遅い返信になってしまい申し訳ありませんでした。久しぶりにここへ来てコメントを発見し、とても申し訳ないとともに、有り難い気持ちで一杯になりました。本当に励みになります、これからまた頑張ります！ (2019年5月13日 21時) (レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり(プロフ) - はじめまして、いつも素敵なお話をありがとうございます！私もメイズランナーが大好きなのですが、灰さんの書かれるお話が面白くて更新を楽しみにしています(^^)背景描写やキャラの心理状態の書き方が丁寧で読みやすくて引き込まれます！これからも応援してます(^^) (2019年5月12日 23時) (レス) id: 6d37aeb524 (このIDを非表示/違反報告)
ふわりん - 初めまして♪この作品の更新をいつも楽しみにしてます！これからも更新頑張ってください。応援してます♪ (2019年4月22日 18時) (レス) id: 17d42863df (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - Hatomuraさん» コメントありがとうございます。おお、私もなんです。全３部作と聞いたので公開が終わるまで待っていたのですが、もっと早く見れば良かったと後悔しました(ノД`)そう言っていただけて、書いて良かったなと思えます。ゆっくりペースですが、これからも更新頑張ります！ (2019年4月11日 21時) (レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灰 | 作成日時：2019年3月26日 19時
