平和など来ない ページ49
テレサの声がして、トーマスが外へ駆け出していく背中が見えた。
「待て！トーマス待つんだ！」
ミンホが叫び、追いかける。
「A、大丈夫か？」
私の肩に手を置いて覗き込むニュートに、我に返る。
まるで一瞬時が止まってしまったようだった。
「大丈夫」
「僕らも行こう」
ニュートの後に続いて集会所の外へ出れば、私もニュートも言葉を失うしかなかった。
グレードは余りにもひどい惨状だった。
建物は倒壊し、辺りには煙が立ちこめ、まだ燃え続けている。
煙の向こうから誰かが歩いてくるのが見えた……１人、２人？いや、３人いる。
先陣を切って大股で歩いてくるのはギャリーだった。
思えばギャリーは集会所に来なかった。
トーマスの判断で集会所へ向かうのは嫌だと、あんな瞬間にも思っていたのかもしれない。
「ギャリー」
トーマスが彼の名を呼んだ瞬間、ギャリーが思い切りトーマスを殴った。
ニュートが私の肩を抱きながら避けると、彼はトーマスを遠ざけるようにギャリーの間に立つ。
「お前のせいだ！見ろ！」
「彼のせいじゃない！」
フライパンやウィンストンが興奮するギャリーを必死に止めていた。
「こいつは一味だ！こいつは破壊のために送られたんだ！トーマス！周りを見ろ！お前のせいだ！！」
「落ち着け！」
憤慨するギャリー、多くの仲間を失った現実、荒れ果てたグレード。
「A……」
その声に隣を見ると、不安そうな顔でチャックが私の服の袖を掴む。
「大丈夫だよ、チャック」
安心させたいのに笑顔は浮べられず、ただチャックの手を握った。
「トーマス？」
テレサの声がしたとき、トーマスがチャックのもう片方の手に握られていたグリーバーの体の１部を取った。
「俺達が築いた物を壊した！」
ギャリーが叫ぶ中、トーマスは注射器のように針が出ているそれを見つめた。
「彼は正しい」
トーマスはそう呟くとテレサを見る。
「記憶を取り戻す」
トーマスは突然手に握っていた注射器の針を、自分の足に突き刺した。
止める間もなかった。
「トーマス！」
テレサの声に、皆が倒れ込むトーマスに駆け寄る。
「注射器で！」
説明するテレサに皆、信じられないという顔でトーマスを見ていた。
「トーマス！大丈夫、私はここよ」
意識を失うトーマスにテレサが声をかけ続ける。
「テレサ、シラムを！」
私の言葉にテレサがハッとしたようにポケットからシラムを取り出し、トーマスの胸に打ち込んだ。
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灰(プロフ) - 蒼井さん» コメントありがとうございます！そうなんです、映画にはない彼らの日常が原作には散りばめられていて。面白いと言っていただけてホッとしました(^^)物語は複雑になるので、私なりの解釈も増えてしまうと思いますが、最後まで突き進んでいけるように頑張ります！(*^^*) (2019年3月26日 19時) (
レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井(プロフ) - いつも読ませて頂いてます:-)映画と原作が混ざっていて、映画では知ることが出来なかった彼らの日常を見れているようで、すごく面白いです！シリーズものは大変だと思いますが、楽しみに待っています(^^) (2019年3月25日 23時) (レス) id: 9bfcc6dade (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - みーか。さん» コメントありがとうございます！楽しみにしているというお言葉をいただけてパワーが漲って参りました(*^^*)進み具合が遅くてわかりづらい部分もあると思いますが、一緒にメイズ・ランナーの世界に浸っていただけるようこれからも頑張ります！コメント嬉しかったです！ (2019年3月25日 21時) (レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
みーか。(プロフ) - 毎日楽しみにしています(*^^*)私もニュート推しなのでとても読んでいて楽しいです(*^.^*)頑張って下さい！ (2019年3月24日 19時) (レス) id: ed1f9d9f70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灰 | 作成日時：2019年3月13日 21時
