最期の会話[ニュート] ページ5
檻の中で、ベンはさっきまでと変わらず蹲っていた。
低く唸りながら、咳をしたかと思うと吐血する。その血は既に黒く変色していて、檻の中に点々と飛び散っていた。
「……ベンは、治る？」
きっと、彼女は僕に助かると言って欲しいのかもしれない。
でも、これだけ血を吐き、眠れないほどの苦痛に耐えている姿を見れば……
首を横に振る僕に、Aは俯く。
そのとき、檻の中から音がした。目を向けた瞬間、ベンがこっちに突進してくる。
僕は慌ててAを自分の後ろにやった。
「俺はトーマスとAを知ってる！！ニュート聞いてくれ！！俺はあいつらを見たんだ！！」
ルイの時と同じだった。チェンジング中に記憶の１部が蘇ることがあるけど、そこでルイもベンもAを見ているというのか。
「ああ、わかった。落ち着け、ベン」
後ろに隠したAが出てくるのが見えて、僕は彼女の腕を引いた。
彼女は力なく檻の前で座りこむ。
「お前だ！お前のせいだ！！」
「ベン、ごめんなさい……私、何も思い出せなくて…貴方やルイに、どんなひどいことをしたのか……本当に、ごめんなさい…っ」
彼女はずっと、ルイが死んだときから考えていたんだろう。自分は無関係ではない、と。
ベンを見ると、彼はその目から涙なのか体液なのかわからない物を流していた。
と言葉にならない声を上げていた彼が、すっと息を吸い込む。
「っ、ごめ、ごめんよA……僕、君にこんなこと言うつもりじゃ……ごめ」
ほんの一瞬、僕はベンの気が戻ったのかと思った。
だけどそれ以降、夕刻まで彼がまともに話せることはなかった。
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「ベンはグリーバーに刺され、トーマスを襲った。仲間を傷つけることはバニッシュにあたる。規則にのっとり、ベンにはここを出て行ってもらう」
アルビーの言葉にこの場にいる全員が悲しみに暮れた顔をする。
苦しそうに顔を歪めたミンホが、ベンを連れてくる。
ちらりと振り返れば、チャックが準備中に僕が頼んでおいた通り、Aの手を引いて離れていくのが見えた。
これでいい、こんな辛い別れを彼女に見せたくはなかった。
「……彼はもういない」
閉まる壁に背を向けて、アルビーが終わりを告げた。
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灰(プロフ) - 蒼井さん» コメントありがとうございます！そうなんです、映画にはない彼らの日常が原作には散りばめられていて。面白いと言っていただけてホッとしました(^^)物語は複雑になるので、私なりの解釈も増えてしまうと思いますが、最後まで突き進んでいけるように頑張ります！(*^^*) (2019年3月26日 19時) (
レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井(プロフ) - いつも読ませて頂いてます:-)映画と原作が混ざっていて、映画では知ることが出来なかった彼らの日常を見れているようで、すごく面白いです！シリーズものは大変だと思いますが、楽しみに待っています(^^) (2019年3月25日 23時) (レス) id: 9bfcc6dade (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - みーか。さん» コメントありがとうございます！楽しみにしているというお言葉をいただけてパワーが漲って参りました(*^^*)進み具合が遅くてわかりづらい部分もあると思いますが、一緒にメイズ・ランナーの世界に浸っていただけるようこれからも頑張ります！コメント嬉しかったです！ (2019年3月25日 21時) (レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
みーか。(プロフ) - 毎日楽しみにしています(*^^*)私もニュート推しなのでとても読んでいて楽しいです(*^.^*)頑張って下さい！ (2019年3月24日 19時) (レス) id: ed1f9d9f70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灰 | 作成日時：2019年3月13日 21時
