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約束と朝[チャック] ページ40

「なぜ僕に渡す?」

「覚えてないから。ここから出られたら、渡してほしい……もう寝な」

ランプを持って僕は歩き出した。
トーマスならきっと、ここを出る道を見つけられるような気がしたから。


「チャック、来い」

トーマスに呼び止められ、僕は込み上げてくる涙をグッと堪えて引き返す。


「手を」

そう言うトーマスに、僕は自分の手の平を差し出した。するとトーマスは僕の手の平にあの人形を置く。



「君が自分で渡すんだ。皆、出られる。絶対に──約束する」

まっすぐ僕の目を見てトーマスは約束してくれた。
手に握りしめた人形を、僕はずっと眺めていた。













──ック、チャック……



優しい声。
寝惚けている僕の目に、綺麗に弧を描く女の人の唇が見えた。





「……ママ?」


ふわふわしていた視界の中で見えていた現実が、だんだんとはっきりしてくる。
僕を見つめるのは、ママではなくAだった。




「おはよう、チャック」

悲しげに微笑む彼女に、僕は目元に残る涙に気づいて慌てて擦った。


「…っ、何でもないんだ」

咄嗟に誤魔化そうとした僕は、Aにそっと抱きしめられていた。



きっと、僕のママもこんな風に温かかったんだろうな。

目覚めるといつもこうして僕を抱きしめ、「おはよう」とキスしてくれて。
リビングへ行けばパパもいて、「おはよう」と抱きしめてくれる。
パンと卵、牛乳が朝食で、鞄を背負って学校に行って勉強をするんだ。


ここへ来てから何度も想像した世界を、僕は今日ほど恋しく、悲しく思えたことはなかったかもしれない。





「……ごめん、もう大丈夫だ」


心が落ち着くのを待ってAからそっと離れた。
彼女はまだ、僕を心配そうに見つめている。



「昨日…トーマスが約束してくれたんだ。ここから絶対出るって……だからこれは、僕の手で両親へ渡せって」

そう言ってポケットからあの人形を取り出す。



「うん…絶対渡そう。チャックの両親も、ずっと貴方を待ってる」

「っ……うん、」


ハンモックから下りた僕の隣に、寄り添うようにAが来る。
キッチンへ行けば、僕以外の人は皆食べているところだった。




「お!チャック、随分と遅いお目覚めだな」

「相変わらずな頭してるな」

通り過ぎるシャンク達が僕に声をかけてくる。


家に帰りたい。
でも、僕には希望がある。そして、僕を心配してくれたり、声をかけてくれる仲間もいる。




僕は1人じゃないよ、パパママ。

刀の中で[トーマス]→←檻の中[トーマス]



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設定タグ:メイズ・ランナー , 紅一点 , ニュート   
作品ジャンル:SF
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(プロフ) - 蒼井さん» コメントありがとうございます!そうなんです、映画にはない彼らの日常が原作には散りばめられていて。面白いと言っていただけてホッとしました(^^)物語は複雑になるので、私なりの解釈も増えてしまうと思いますが、最後まで突き進んでいけるように頑張ります!(*^^*) (2019年3月26日 19時) (レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井(プロフ) - いつも読ませて頂いてます:-)映画と原作が混ざっていて、映画では知ることが出来なかった彼らの日常を見れているようで、すごく面白いです!シリーズものは大変だと思いますが、楽しみに待っています(^^) (2019年3月25日 23時) (レス) id: 9bfcc6dade (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - みーか。さん» コメントありがとうございます!楽しみにしているというお言葉をいただけてパワーが漲って参りました(*^^*)進み具合が遅くてわかりづらい部分もあると思いますが、一緒にメイズ・ランナーの世界に浸っていただけるようこれからも頑張ります!コメント嬉しかったです! (2019年3月25日 21時) (レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
みーか。(プロフ) - 毎日楽しみにしています(*^^*)私もニュート推しなのでとても読んでいて楽しいです(*^.^*)頑張って下さい! (2019年3月24日 19時) (レス) id: ed1f9d9f70 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年3月13日 21時

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