彼女の寝言 ページ28
私は眠る彼女に付き添っていた。
容体は安定してるから交代で見よう、と今はクリントもジェフも遅い昼食を摂っている。
今頃ト−マス達はメイズの中だ、何もなく早く帰ってきて欲しい。ただ、それだけでよかった。
「……彼女はどうだ?」
その声に顔を上げれば、ニュートが彼女の様子を見に来てくれた。彼は彼女を挟んで私の前に腰掛ける。
私は首を横に振って、眠る彼女を見つめながら口を開いた。
「……ずっと、寝言を呟いてる」
「なんて?」
「よくわからないけど……聞き取れたのは“全ては変わる”という言葉と、トーマスの名前。彼の名を何度も呼んでる」
彼女からニュートへ視線を動かせば、彼は険しい表情で彼女を見る。
“全ては変わる”ニュアンスは少し違うかもしれないけど、私とトーマスが見た夢と同じ言葉。
「彼女とトーマスにはきっと繋がりがあると思う。彼女を見ていたトーマスの様子も、少し変だった」
「ああ、それは僕も感じたよ」
「……もしかしたら、私も関係してるかもしれない」
「君は彼女を知ってるか?」
「わからない……けど」
何かとても嫌な予感がする。
「A、代わるよ。どうだった?」
クリントが昼食を食べ終えて戻ってくる。
「変わりないよ、寝言も同じでよく眠ってるみたい」
「そっか、ありがとうな。腹減っただろ?君も何か摘まんでくるといい」
微笑むクリントに、私も微笑み返した。
少し遅れてジェフも戻ってくる。ジェフはニュートを見ると、あ、と呟いた。
「ニュート、ミンホ達が君を探してたよ。すぐに集会所へ来て欲しいって」
ジェフの言葉に私とニュートは顔を見合わせた。
ミンホ達がメイズから帰ってきたんだ。
「わかった。A、君も来てくれ」
「うん」
走り出すニュートに続いて、私もメッド・ジャックを出た。
集会所に着けば、既にトーマスとミンホ、それにフライパン、ウィンストン、ザートもいた。
彼らが一緒にメイズへ行ってくれてたんだ。
見たところ誰も怪我はしていないようで、私はホッと胸をなで下ろした。
「どうしてAまでいる?」
鋭く飛んできた声に目をやれば、ギャリーが腕組みしながら私を睨んでいた。
よく考えれば、ここに集まっているのは限られたキーパーだけだ。私は途端に居心地の悪さを感じた。
「怪我をしてる可能性を考慮し、僕が連れてきた」
「おいニュート、こいつらがメイズへ行ったのを知ってたのか?」
食い下がるギャリーに、私は息を呑んだ。
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灰(プロフ) - 蒼井さん» コメントありがとうございます!そうなんです、映画にはない彼らの日常が原作には散りばめられていて。面白いと言っていただけてホッとしました(^^)物語は複雑になるので、私なりの解釈も増えてしまうと思いますが、最後まで突き進んでいけるように頑張ります!(*^^*) (2019年3月26日 19時) (レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井(プロフ) - いつも読ませて頂いてます:-)映画と原作が混ざっていて、映画では知ることが出来なかった彼らの日常を見れているようで、すごく面白いです!シリーズものは大変だと思いますが、楽しみに待っています(^^) (2019年3月25日 23時) (レス) id: 9bfcc6dade (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - みーか。さん» コメントありがとうございます!楽しみにしているというお言葉をいただけてパワーが漲って参りました(*^^*)進み具合が遅くてわかりづらい部分もあると思いますが、一緒にメイズ・ランナーの世界に浸っていただけるようこれからも頑張ります!コメント嬉しかったです! (2019年3月25日 21時) (レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
みーか。(プロフ) - 毎日楽しみにしています(*^^*)私もニュート推しなのでとても読んでいて楽しいです(*^.^*)頑張って下さい! (2019年3月24日 19時) (レス) id: ed1f9d9f70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灰 | 作成日時:2019年3月13日 21時