面白い、と[ザート] ページ27
「お、おいおい何するつもりだ?」
何かの覚悟を決めたように近づくミンホに、僕は思わず口に出していた。
ミンホは僕らを見て戸惑ったような顔を浮かべながらも、壁の中に手を突っ込む。
息を呑んで見ていた次の瞬間、壁から飛び出していたグリーバーの足が鈍い機械音と共に動いた。
「うわあっ!」
僕らの悲鳴が重なり、急いで後退る。
「死んでるのかと」
フライパンが信じられないという顔で呟く。確かに死んでいるように見えた。
「反射か?」
そうであってほしい、という願いも込めて言った僕に、「だといいが」とウィンストンが僕を見る。
「よし、引き抜こう。みんな、手を貸せ」
トーマスが先陣を切って金属の足を持ち上げる。
おいおい本気か。内心相当怖かったけど、従うミンホやフライパンの姿に、僕も覚悟を決め、金属の足を持った。
「いいか、1,2,3」
トーマスの合図で思いっきり引っ張る。力一杯引っ張れば、ぶちぶちと肉にこびりついてた繊維が千切れるような音を出しながらグリーバーの足が抜けた。
赤く小さなライトが点滅してる肉の断片が、引っ張った拍子で外に落ちていた。
ミンホはそれを掴んで持ち上げると、顔を顰めながら手を突っ込む。
べちゃっとした気持ち悪い体液とともに筒状の機械が出てきた。
「それは何だ?」
トーマスが訊ねる。ミンホは「面白い」と呟くと興味深そうに機械をくまなく見る。
「何だっていいが、それを持って戻ろう。お友達が来るかも」
フライパンの言葉に急に背筋がぞくっと震えて振り返った。
彼の言うとおりだ、いつあいつらが来てもおかしくはない。
「そうだな。日が暮れる、行こう」
ミンホが即決してくれたことに安堵し、僕らはメイズを出た。
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グレードの地に足を踏み入れた瞬間、僕はこれほどまでにこの地を愛おしく思えたことはなかった。
……帰ってきた、あのメイズから。
それはランナー達に比べるとほんのわずかな時間だけど、自分の足でメイズに入ったことに変わりはない。その事実を考えれば、高揚感を抱いた。
「ニュートに全部話そう」
トーマスがミンホに声をかける。
ちらっと振り向いたミンホは頷くと、「ギャリーにもな。あいつは俺達が何をしたか気づいてる」そう言って溜め息を吐いた。
僕はミンホの言葉にトーマスがあまりいい顔をしなかったのを見た。
ギャリーがトーマスを露骨に敵対視し嫌っているように、彼もギャリーが嫌いなんだろう。
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灰(プロフ) - 蒼井さん» コメントありがとうございます!そうなんです、映画にはない彼らの日常が原作には散りばめられていて。面白いと言っていただけてホッとしました(^^)物語は複雑になるので、私なりの解釈も増えてしまうと思いますが、最後まで突き進んでいけるように頑張ります!(*^^*) (2019年3月26日 19時) (レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井(プロフ) - いつも読ませて頂いてます:-)映画と原作が混ざっていて、映画では知ることが出来なかった彼らの日常を見れているようで、すごく面白いです!シリーズものは大変だと思いますが、楽しみに待っています(^^) (2019年3月25日 23時) (レス) id: 9bfcc6dade (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - みーか。さん» コメントありがとうございます!楽しみにしているというお言葉をいただけてパワーが漲って参りました(*^^*)進み具合が遅くてわかりづらい部分もあると思いますが、一緒にメイズ・ランナーの世界に浸っていただけるようこれからも頑張ります!コメント嬉しかったです! (2019年3月25日 21時) (レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
みーか。(プロフ) - 毎日楽しみにしています(*^^*)私もニュート推しなのでとても読んでいて楽しいです(*^.^*)頑張って下さい! (2019年3月24日 19時) (レス) id: ed1f9d9f70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灰 | 作成日時:2019年3月13日 21時