検索窓
今日:10 hit、昨日:47 hit、合計:42,209 hit

ただ、心配なだけ ページ25

「A、君が何と言っても彼らは行くよ」


穏やかな声色とともに、振り返るとニュートがこっちへ歩いてくる。



「殺したグリーバーを調べてくるんだろ?」

ニュートがそう言えば、トーマスが力強く頷いた。


「ああ、それで何かわかるかもしれない」

「わからなかったら?それかもしグリーバーが生きていて、襲われたりしたらどうする?」

ニュートは腕を組み、探るようにトーマスを見つめた。


「……いや、必ず何かわかるはずだ。だから行かせて欲しい。場所は覚えてるし、危険を感じたらすぐ引き返す」

畳みかけるように言うトーマスに、私がもういくら止めても無理なんだろう、と諦めに似た気持ちで悟る。



「少人数より、4〜5人で行った方がいい。だったらキーパーを集めてくるしかないか、僕も行くよ」

「ニュート、君はここにいるべきだ」

「ああ、俺もそう思う。そして、君は俺達がこれからすることに一切関わるな。何も聞なかったことにしてくれ」

ミンホは副リーダーとしてのニュートの立場を案じているんだとわかった。



「……わかった。トーマス、君は先に森へ行け。グレード中が君の言動に目を光らせていることを忘れるなよ。あと、必ずすぐに帰ってこい」

「ああ、わかった」


トーマスはニュートに頷くと、私を見た。

申し訳なさそうな、何か言いたげな顔をしたトーマスだったけど、森の中へと駆けていく。ミンホもすぐに動き出した。








「……A?まだ怒ってるのか?」


俯く私の顔をニュートが覗き込んでくる。

ううん、と首を振ればじわ、と涙が滲む。泣きたくないのに。


私は一体、何をしたかったんだろう。ちゃんと言いたいことも言えなかった。心配だから、と。
高ぶった感情をただ彼らにぶつけてしまった自分が情けない。




「怒ったり泣いたり、今日の君は忙しいな」

「……泣いてない」

ふーっと息を吐いて、溢れそうになる涙をぐっと堪えた。
息を吸って吐いて、そんなことを繰り返していると、頭の上にニュートの手が置かれる。



「君の中で、感情が隠せないほど守りたいものが増えてきた証拠だと僕は思う。ここに来た頃の君を思い出すよ。あの頃の君は、虚無感で満たされた目をしてた。こんな風にね?」

ニュートを見上げれば、彼はぼーっと遠くを見る。



「そんな顔してない」

「はは、そんな顔だったさ。今の君の方がずっと魅力的に見えるよ」



……困るくらいに、と最後に呟いたニュートの声はどこか寂しそうだった。

グリーバーって奴は[フライパン]→←女の子は怒ると怖い[トーマス]



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (37 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
29人がお気に入り
設定タグ:メイズ・ランナー , 紅一点 , ニュート   
作品ジャンル:SF
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - 蒼井さん» コメントありがとうございます!そうなんです、映画にはない彼らの日常が原作には散りばめられていて。面白いと言っていただけてホッとしました(^^)物語は複雑になるので、私なりの解釈も増えてしまうと思いますが、最後まで突き進んでいけるように頑張ります!(*^^*) (2019年3月26日 19時) (レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井(プロフ) - いつも読ませて頂いてます:-)映画と原作が混ざっていて、映画では知ることが出来なかった彼らの日常を見れているようで、すごく面白いです!シリーズものは大変だと思いますが、楽しみに待っています(^^) (2019年3月25日 23時) (レス) id: 9bfcc6dade (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - みーか。さん» コメントありがとうございます!楽しみにしているというお言葉をいただけてパワーが漲って参りました(*^^*)進み具合が遅くてわかりづらい部分もあると思いますが、一緒にメイズ・ランナーの世界に浸っていただけるようこれからも頑張ります!コメント嬉しかったです! (2019年3月25日 21時) (レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
みーか。(プロフ) - 毎日楽しみにしています(*^^*)私もニュート推しなのでとても読んでいて楽しいです(*^.^*)頑張って下さい! (2019年3月24日 19時) (レス) id: ed1f9d9f70 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2019年3月13日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。