ただ、心配なだけ ページ25
「A、君が何と言っても彼らは行くよ」
穏やかな声色とともに、振り返るとニュートがこっちへ歩いてくる。
「殺したグリーバーを調べてくるんだろ?」
ニュートがそう言えば、トーマスが力強く頷いた。
「ああ、それで何かわかるかもしれない」
「わからなかったら?それかもしグリーバーが生きていて、襲われたりしたらどうする?」
ニュートは腕を組み、探るようにトーマスを見つめた。
「……いや、必ず何かわかるはずだ。だから行かせて欲しい。場所は覚えてるし、危険を感じたらすぐ引き返す」
畳みかけるように言うトーマスに、私がもういくら止めても無理なんだろう、と諦めに似た気持ちで悟る。
「少人数より、4〜5人で行った方がいい。だったらキーパーを集めてくるしかないか、僕も行くよ」
「ニュート、君はここにいるべきだ」
「ああ、俺もそう思う。そして、君は俺達がこれからすることに一切関わるな。何も聞なかったことにしてくれ」
ミンホは副リーダーとしてのニュートの立場を案じているんだとわかった。
「……わかった。トーマス、君は先に森へ行け。グレード中が君の言動に目を光らせていることを忘れるなよ。あと、必ずすぐに帰ってこい」
「ああ、わかった」
トーマスはニュートに頷くと、私を見た。
申し訳なさそうな、何か言いたげな顔をしたトーマスだったけど、森の中へと駆けていく。ミンホもすぐに動き出した。
「……A?まだ怒ってるのか?」
俯く私の顔をニュートが覗き込んでくる。
ううん、と首を振ればじわ、と涙が滲む。泣きたくないのに。
私は一体、何をしたかったんだろう。ちゃんと言いたいことも言えなかった。心配だから、と。
高ぶった感情をただ彼らにぶつけてしまった自分が情けない。
「怒ったり泣いたり、今日の君は忙しいな」
「……泣いてない」
ふーっと息を吐いて、溢れそうになる涙をぐっと堪えた。
息を吸って吐いて、そんなことを繰り返していると、頭の上にニュートの手が置かれる。
「君の中で、感情が隠せないほど守りたいものが増えてきた証拠だと僕は思う。ここに来た頃の君を思い出すよ。あの頃の君は、虚無感で満たされた目をしてた。こんな風にね?」
ニュートを見上げれば、彼はぼーっと遠くを見る。
「そんな顔してない」
「はは、そんな顔だったさ。今の君の方がずっと魅力的に見えるよ」
……困るくらいに、と最後に呟いたニュートの声はどこか寂しそうだった。
グリーバーって奴は[フライパン]→←女の子は怒ると怖い[トーマス]
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灰(プロフ) - 蒼井さん» コメントありがとうございます!そうなんです、映画にはない彼らの日常が原作には散りばめられていて。面白いと言っていただけてホッとしました(^^)物語は複雑になるので、私なりの解釈も増えてしまうと思いますが、最後まで突き進んでいけるように頑張ります!(*^^*) (2019年3月26日 19時) (レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井(プロフ) - いつも読ませて頂いてます:-)映画と原作が混ざっていて、映画では知ることが出来なかった彼らの日常を見れているようで、すごく面白いです!シリーズものは大変だと思いますが、楽しみに待っています(^^) (2019年3月25日 23時) (レス) id: 9bfcc6dade (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - みーか。さん» コメントありがとうございます!楽しみにしているというお言葉をいただけてパワーが漲って参りました(*^^*)進み具合が遅くてわかりづらい部分もあると思いますが、一緒にメイズ・ランナーの世界に浸っていただけるようこれからも頑張ります!コメント嬉しかったです! (2019年3月25日 21時) (レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
みーか。(プロフ) - 毎日楽しみにしています(*^^*)私もニュート推しなのでとても読んでいて楽しいです(*^.^*)頑張って下さい! (2019年3月24日 19時) (レス) id: ed1f9d9f70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灰 | 作成日時:2019年3月13日 21時