熱くなる瞬間[フライパン] ページ1
「ベン……」
不安そうに呟いたAがベンに近づこうとしたとき。
よろけたAを受け止めようとした瞬間、ベンが柵に突進してくる。
両腕を拘束されているはずなのに、今にも飛び出してきそうな勢いに思わず俺は後退った。
柵の間に頭を押しつけ、口から涎を垂らし、獣のように唸る姿はとてもじゃないが見ていられなかった。
目を逸らせばAが尻餅をついていた。そうか、結局ベンが突進してきたことに驚いて俺が支えられなかったから。
「おい、大丈夫か?」
自分の逸る鼓動を押さえるように深呼吸しながら、Aに手を伸ばす。が、彼は呆然としていた。
「A……?」
呼んでも反応のない彼に、俺は皆の方を振り返った。
ニュートが1番先に動き、Aの前に跪いて、目を合わせる。
「A?大丈夫か?」
ニュートの呼び声に、微かにAが頷くのが見えた。
ベンは檻の中で蹲り震えているが、先程までのような唸り声は小さくなっていた。
「夕刻まで待つ。皆、仕事に戻るんだ」
アルビーの声に目をやれば、アルビーは背を向けて去っていく。
ギャリーや他の奴等も続く。
クリントとジェフはアルビーやギャリーから向けられる視線に居心地悪そうにしながらも残った。
「……どうしてあんなことしたんだ」
ニュートがAの肩を支えるようにしながら立ち上がらせて、問う。
俺もクリントもジェフも、皆彼の様子を見守っていた。
「っ──ベンは、友達だから……っ」
鼻の奥がつんとして、何か熱いものが胸の奥から込み上げてくるのがわかった。
それは、ここへ来てからどこかで諦めていた感情。裏表のないまっすぐな思いだった。
「……そうか、わかった。今はベンを刺激させたくないから離れよう。直にミンホも戻ってくる」
Aを見つめるニュートもきっと。
ニュートが穏やかな声色でAの頭に手を置く。Aが自分の両目をごしごしと擦る後ろ姿が見えた。
振り向いた彼に、俺は手を差し出して握手を求める。
「よくやってくれたな……見直したよ、シャンク」
彼の言うとおり、俺達は仲間だ。
仲間に何もせず諦めるなんて、当たり前のことじゃないんだ。
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灰(プロフ) - 蒼井さん» コメントありがとうございます!そうなんです、映画にはない彼らの日常が原作には散りばめられていて。面白いと言っていただけてホッとしました(^^)物語は複雑になるので、私なりの解釈も増えてしまうと思いますが、最後まで突き進んでいけるように頑張ります!(*^^*) (2019年3月26日 19時) (レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井(プロフ) - いつも読ませて頂いてます:-)映画と原作が混ざっていて、映画では知ることが出来なかった彼らの日常を見れているようで、すごく面白いです!シリーズものは大変だと思いますが、楽しみに待っています(^^) (2019年3月25日 23時) (レス) id: 9bfcc6dade (このIDを非表示/違反報告)
灰(プロフ) - みーか。さん» コメントありがとうございます!楽しみにしているというお言葉をいただけてパワーが漲って参りました(*^^*)進み具合が遅くてわかりづらい部分もあると思いますが、一緒にメイズ・ランナーの世界に浸っていただけるようこれからも頑張ります!コメント嬉しかったです! (2019年3月25日 21時) (レス) id: 29fcd6d8e4 (このIDを非表示/違反報告)
みーか。(プロフ) - 毎日楽しみにしています(*^^*)私もニュート推しなのでとても読んでいて楽しいです(*^.^*)頑張って下さい! (2019年3月24日 19時) (レス) id: ed1f9d9f70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灰 | 作成日時:2019年3月13日 21時