呪術廻戦*狗巻くんの心の声

39.呪い ページ40

Aの言葉を聞いて、まるで時間が止まったように、僕は動けなくなった。


『…狗巻くん？大丈夫？』


思考が停止していることが分かったのか、Aが不安そうに僕の顔を覗き込む。


「…しゃけ」


頷くと、Aは微笑んで話を続けた。


『狗巻くんがたくさん“好き”って思ってくれるのが、私はすごく幸せで。でも、もしその“好き”がなくなったらどうしようって、不安になったりもして…それで気付いたの。私も狗巻くんが好きで、狗巻くんの“好き”がもっと欲しい』


Aの手が伸びて、僕の手に重なる。

少し震えているのは、緊張しているからだろうか。


僕は口元のファスナーを下ろして、Aの目を見つめた。


___“好き”


初めて、自分の気持ちを口に出して彼女に伝える。


___“付き合って、ください”


僕の言葉は、呪言となって彼女に届く。

でも、きっと呪力なんかなくたって、Aはこうやって嬉しそうに笑って頷いてくれる筈だ。


___ずっと、一緒にいてね


僕の頭に、Aの声が響く。

彼女の呪力と想いが込もった、温かい音。



その日、僕達は互いを呪い合った。


誰も傷付くことのない、幸せな呪い。

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