呪術廻戦*狗巻くんの心の声

32.女も ページ33

「…Aがしたいようにするのが一番だけどね」

『私がしたいように…』

「でも、前も言ったけど男には気を付けなよ〜。悟みたいな不審な奴は腐る程いるから」

『ふふ、気を付けます』


Aが少し微笑む。


あぁ、やっぱり女の私は警戒されていない。

その証拠に、Aは私の指先を少し握り、潤んだ瞳で上目遣いをしている。

こんな表情、誰でも落とせるだろうに。


『ありがとうございます、硝子さん』

「…そんな可愛い表情、みんなの前でもしてんの？」

『ふぇ？』


私が尋ねると、Aは間の抜けた声で聞き返して来た。

そんなとぼけた仕草すら、この子にさせると凶器に化した。


私が指先に触れるAの手を絡め取ると、彼女は少し驚くも、どこか嬉しそうに笑った。


「何、嬉しそうにしちゃって」

『何だか仲良しみたいで、嬉しいんです』


私の手を握り返す。


思念が聞こえないと、この子は下心の有無ですら汲み取れないらしい。


「A」


名前を呼ぶと、顔を上げて私の目を見た。

そんなAの顎に手を添え、頬に口付けをする。


『…っ…硝子さん…？』

「口にしてやろうかと思ったけど。生憎さっきまで煙草吸ってたもんだからさ」


私が言うと、Aは数回瞬きをした後、恥ずかしそうに頬を赤く染めた。


「…女も警戒しなきゃダメだよ、A」

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