30.私の考え事 ページ31
〈僕がもし、呪言に縛られずに、伝えたい事を自由に伝えられたとしたら…憂太のようにAを励まして、笑顔にさせられたのかな〉
狗巻くんの思念が聞こえる。
彼が自分の気持ちを言葉で伝えているところを、私は見た事がない。
呪言の関係で、狗巻くんがそれをする事が出来ないのは知っている。
私なら、言葉で表さなくても気持ちは伝わってくる。
それでも私は、彼の気持ちを彼の声で聞きたいと思うようになっていた。
…また私は、我儘な事を考えてしまっている。
『…狗巻くん、焼けたから食べよう?』
考えていた事を掻き消す様に、彼に声を掛ける。
彼も、思念を紛らわせる様に笑顔でこっちを向いた。
「…美味いな、たこ焼き」
『みんなで作って食べるから、余計に美味しいね』
笑って話して食べている内に、時間はあっという間に経ってしまう。
みんなお腹いっぱいになった頃に、片付けを始める。
「…あ。棘、そこの携帯取ってくんね?」
食器を運ぶ為に立ち上がった真希ちゃんが、狗巻くんに言う。
「しゃけ」
地面に転がる真希ちゃんの携帯を拾うときに、画面が偶然見えたのか、狗巻くんは何故か固まった。
〈…あ。待ち受け、Aにしてたの忘れてた〉
…?
真希ちゃんから聞こえて来た心の声に、耳を疑う。
〈これ、A…?何この写真…羨ましい、欲しい…〉
狗巻くんの思念を聞いて、私は隣を通り掛かるフリをして彼の手元を見た。
『…真希ちゃん?!何で私の写真…!しかもさっきの…!』
狗巻くんが凝視していたのは、よりによってさっき真希ちゃんに撮られたあの間抜けな寝顔。
「悪りぃ、ふざけて設定してたの忘れてたわ」
ニヤニヤ笑っている真希ちゃん。
〈…写真見たら、この間Aが僕に引っ付いて寝てたときのこと、思い出しちゃった…〉
そう考えている狗巻くんの頬が、赤く染まっていく。
そんな恥ずかしい事、思い出さないで…!
『…真希ちゃんと狗巻くんの、おばか!』
八つ当たりをする様に言ってしまう。
〈おバカってなんだよ、怒り方が小学生だな〉
〈Aがおバカって…可愛い…〉
私の怒りは、まともに2人には届かなかった。
そんな私達を見て、乙骨くんとパンダくんが呆れた様に笑っている。
顔から火が出る程恥ずかしいけれど。
こうやってみんなで笑ったり騒いだりする時間が、私はすごく好きだ。
狗巻くんと目が合う。
思わず私が笑ってしまうと、彼も優しく笑ってくれた。
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saki - 告白の仕方がこう…どっちも呪いって言うのが良すぎる!硝子さん出てくるのも好き… (11月4日 0時) (レス) @page43 id: 15ea9621b8 (このIDを非表示/違反報告)
佳日 - 初めまして!緋波さんの描く狗巻先輩とヒロインがすごく可愛らしくて一気に最新話まで読んでしまいました!ずっときゅんきゅんしています!素敵な作品をありがとうございます! (2021年4月11日 12時) (レス) id: d082233f53 (このIDを非表示/違反報告)
ねね - 狗巻先輩かっこいい〜〜〜!あの整った顔立ち、さらっさらの髪の毛!素敵な声〜〜〜!!凄く好きです!好きすぎて丸一日狗巻先輩のことを考えています!!大大大大ファンです!続きを楽しみに待ってます! (2021年3月19日 21時) (レス) id: 1efb73ea53 (このIDを非表示/違反報告)
緋波(プロフ) - #すずめさん» ありがとうございます~!*これからも頑張ります* (2021年3月6日 19時) (レス) id: c96b915781 (このIDを非表示/違反報告)
#すずめ(プロフ) - 狗巻先輩可愛い!これからも更新頑張って下さい!! (2021年3月6日 8時) (レス) id: d788bf59a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緋波 | 作成日時:2021年2月21日 0時