呪術廻戦*狗巻くんの心の声

29.僕の考え事 ページ30

悟が持って来たたこ焼き器を共同スペースまで運んでいると、ちょうどAと真希がやって来た。


『すごい、ホントにたこ焼き器だ〜』


テーブルに置いてあるたこ焼き器を見てはしゃぐAは、いつも通り可愛い。

何だか少し髪もハネているし、声も眠そうだから、寝起きなのかもしれない。


わくわくしているAを尻目に、真希達はテキパキと準備を進めていく。


「A、たこ焼き初めてか？」

『食べたことはあるけど、たこ焼き器は初めて見た…』

「じゃあこれ、やってみる？」


生地をひっくり返すのに使っていた錐を、憂太がAに手渡す。

Aは、『やる〜！』と目を輝かせて言う。


「A、下手そうだな」

『んぐ…』


パンダの言葉に言い返さないあたり、自信はないんだろう。

首を傾げながらも、憂太がさっきまでやっていたことを見様見真似でやってみるA。


『…わ、出来たよ！』


上手くいった様で、Aが嬉しそうに言いながら振り向く。

ちょうど彼女の目線のすぐ先には僕がいて、嬉しそうに微笑み掛けてくれる。


「しゃけしゃけ」


僕も平然を装って微笑み返したけれど、Aの可愛い笑顔で心臓はバクバクだし、きっと顔だって赤くなってる。


顔を隠す様に服に埋めながら、考える。

もっと近くで、Aのその笑顔を見たいのにな。


そんなことを思っていると、Aは突然恥ずかしそうに僕から目を逸らした。


『…はしゃぎ過ぎちゃった、恥ずかしい…』


…そんな一つ一つの言動が可愛くて。

恥ずかしそうにするAを見ていると、僕の方が照れてしまう。


「お前が子供なのはいつもだろ。ほら、焦げるぞ」


真希の言葉に、『子供じゃないもん…』と膨れているA。


「Aさんが楽しそうだと僕達も楽しいから、そんなに恥ずかしがらないで」

『ありがとう、乙骨くん〜…』


憂太に嬉しそうに笑うAを見て、少し嫉妬した。


僕がもし、呪言に縛られずに、伝えたい事を自由に伝えられたとしたら。

憂太のようにAを励まして、笑顔にさせることが出来たのだろうか。


『…狗巻くん、焼けたから食べよう？』


考え事をしていると、Aの声が聞こえてくる。

考えていた事を悟られない様に、僕は少し笑ってAの方を向いた。

30.私の考え事→←28.寝顔

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す