呪術廻戦*狗巻くんの心の声

1.憂鬱 ページ2

〈あ〜、だる…〉

〈前の子可愛いな…どこの学校だろ〉

〈帰りたいなぁ〉


通学時の人の多い電車。

大勢の人の声が頭に入り込んで来て、私は気分が悪くなる。


人の思っていることが分かる。

こんな不思議な力を持っていて、得したことなんてほとんどない。


自分に笑顔を向けてくれている友人が内心では毒を吐いていたり、担任が女子高生と邪な気持ちを抱きながら接していたり。

そんなことを知っても嫌気が刺すだけだ。


人の心の声が聞こえて来ることに加えて、私には“幽霊が視える”というこれまた厄介な能力がある。

こんなものも怖いばかりで、何の役にも立たない。


現に今も、睨むようにこちらを見て来る黒い何かから目を逸らすのに必死だ。


〈…やっぱりあの子、スカート短いな…見えるかな〉


そんなとき、突然大きな音が頭に響いて来た。

距離が近い人の思念程大きく聞こえるから、きっとすぐそばにいる人のものだ。


何気なく周りを窺ってみると、私の左隣に立っている女子高生を見つめる男の人がいた。

私が少し後ろに下がると、彼は露骨に嫌そうな顔をした。


〈あいつ邪魔…〉


見ず知らずの人に悪態をつかれて、思わずため息が漏れる。

人の為になることだとしても、感謝されることもないし、心が読めるなんて知られたら面倒だから大きな何かを成すことも出来ない。


こんなものなら、ない方が断然マシだ。

そんなことを考えながら、私は毎日憂鬱な日々を過ごしていた。


あの“最強”と出会うまでは。

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