世界一不器用な。 ページ16
「ねぇ七海、聞きたいことがあるんだけど」
ズキズキと痛む右手の甲を擦りながら包帯を巻いていると灰原から声がかかる。
「…なんですか」
「妹さんのこと。口を聞いてないって前言ってたよね」
触れられたくなかった話題に顔をしかめると、灰原はそれを見なかったかのように隣に座る。
「ねぇ七海、七海は妹さんのこと大事なんだよね」
「…当たり前でしょう、大切ですよ」
「じゃなきゃ五条さん殴ったりしないもんね」
私の手の甲を見て灰原が笑う。
自分の感情に任せて人を殴ったのは初めてだ。
てっきり無下限に阻まれると思っていた私の拳は、しっかりと先輩の頬を打っていた。
感情に任せて人に暴力を奮った自分に、絶対に私なんかに黙って殴られない先輩の殊勝な顔に、ひどく動揺して振り上げた拳を止めていた。
「なんで、」
「＿＿＿大事な妹なんだろ。殴れよ、お兄ちゃん。
妹が心配なら、俺のことを気が済むまで殴れ。」
五条さんの目は真剣そのもので、いつものふざけや嫌がらせでないことだけは確かだった。認めたくないが、彼は本気で妹＿＿＿Aに惚れているのだろう。
記憶の片隅で微笑む妹の顔は、今からちょうど三年前で止まっている。両親から写真を送ってもらっていたが、まともに顔を見て会話をしたのはもう三年も前だ。
「視えないし呪力を持たない妹に、呪術のことを知ってほしくない」
「…」
「祓う方法を知らなかった当時の私には彼女を守ることはできなかった。だから近くにいることを拒んだんです」
全く以て自分の醜いエゴだ。
自分の前で、自分の見えているアレに妹が傷をつけられるのを見たくなかった。大事な妹一人守れない自分の姿を見たくなかった。
それだけのために、私は妹を避けた。
彼女はひどく混乱したことだろう。嫌ってくれればよかったのに、彼女は粘り強く私に話しかけ、連絡を取り続けてくれていた。
相手があの五条さんであろうが、誰であろうが、本来私には彼女の交際関係に口を出す資格などない。
頭でわかっているのに自分は何をしているのか。
あろうことか妹の彼氏である五条さんを殴り、妹には「早く別れろ」だなんてメールを送っている。
「…はぁ」
自分の情けなさに、深いため息をつくことしかできない。
灰原はしばらく黙っていたが、やがて私の肩を思い切り掴んだ。
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lokiloki - こちらの作品をとても気に入ったのでプレイリストに載せさせてもらいます ※自分の作品を消したい場合はお手数をかけますがプレイリストの 【おもしろ度を投票】の上にある 【リストから削除】からやるか、プレイリストのコメントから作者に言ってください (12月15日 16時) (
レス) @page3 id: 7de4ffbd52 (このIDを非表示/違反報告)
眠民。＿ねむみん。 - 凄く面白いしいい作品でした~!!作者さんってもしかして最強!?これからも応援してます!ステキな作品ありがとうございました!! (11月19日 11時) (レス) @page45 id: 03ba19f866 (このIDを非表示/違反報告)
かけたま - こんなにも面白い作品を生み出すあなたは(^^)最強か？ これからも応援させて頂きます。 頑張って！！ (2021年12月12日 0時) (レス) id: a9aad67263 (このIDを非表示/違反報告)
猫餅 - 体長が体調になっています。>"< (2021年8月11日 20時) (レス) id: 3a7b856aca (このIDを非表示/違反報告)
ぬぬ(プロフ) - 素敵な作品私ありがとうございました。とても面白かったです！ (2021年4月26日 11時) (レス) id: 7168c245e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宙
| 作成日時：2020年12月31日 14時
