おばけなんてないさ。 ページ29
･
何かがいる。
最初は体調も悪くならなくて、ただ何かがそこにあるだけだったから気にも止めていなかった。
だけどそれは徐々に大きくなって、徐々に私の体調も悪くなっていった。
「あれ、カフェの店員さんじゃん。なにしてんのこんなとこで」
ゴミを捨てに行ったとき。吐き気がひどくてゴミ箱にたどり着く前に座り込んでえづいていた私に声をかけてくれたのが、悟くんだった。
『い、いやちょっと…、吐き気が』
「てんちょーに言って帰ったほうがいいんじゃねーの」
『一時的なものだから大丈夫、』
よっこらせ、と立ち上がらせてくれようとした悟くんの腕を掴んで止める。ちらりとゴミ箱に目を向けると、まだ「何か」はそこにいた。
悟くんはしばらく黙っていたが、やがて手に持っていた袋を指差した。
「…ゴミ、貸して。俺が捨ててきてやるから」
『でも、』
「いーからいーから」
ひょい、と手に持っていたゴミ袋を取り上げられる。彼はそれをくるくると振り回しながらゴミ箱の方に歩いていった。
『っ、あれ…』
吐き気がフッと消えた。
ゴミ箱の方に歩いていた悟くんがそれを置いて戻ってくる。
悟くんの後ろに視線を向けると、そこにいたハズの「何か」がいなくなっていた。どこかに動いたのだろうか。
「どした？」
『気持ち悪いの、なくなりました』
「…良かったじゃん」
じゃ俺行くわ、と振り返らずに歩いていってしまった。
悟くんは、おばけのことを何か知ってるのかもしれない。
『んー…』
かといって返事もしてないのに電話するのも迷惑かな。流石に都合良すぎる？
そんなことを考えているうちに、画面がぱっと切り替わった。
『あれ、かかっちゃった…！』
発信ボタンが指にかかって勝手に電話がかかってしまう。
すぐに切らなきゃと思う気持ち半分、最近話せてない悟くんの声を聞きたいという気持ち半分。
《只今電話に出ることができません。ピーッという発信音のあとに＿＿＿…》
忙しいのか、悟くんは電話に出なかった。もし出ていたら何を話すつもりだったんだ私は、と自分を叱咤して電話を切る。
『…やっぱり相談するほどのことでもないよね。
心配のし過ぎは良くないって言うし、とりあえずみんなといっしょに行って危なそうなら帰ろう』
ぼすんとベッドに身を落とす。
白いシーツが私の体に引っ張られて縒れた。
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lokiloki - こちらの作品をとても気に入ったのでプレイリストに載せさせてもらいます ※自分の作品を消したい場合はお手数をかけますがプレイリストの 【おもしろ度を投票】の上にある 【リストから削除】からやるか、プレイリストのコメントから作者に言ってください (12月15日 16時) (
レス) @page3 id: 7de4ffbd52 (このIDを非表示/違反報告)
眠民。＿ねむみん。 - 凄く面白いしいい作品でした~!!作者さんってもしかして最強!?これからも応援してます!ステキな作品ありがとうございました!! (11月19日 11時) (レス) @page45 id: 03ba19f866 (このIDを非表示/違反報告)
かけたま - こんなにも面白い作品を生み出すあなたは(^^)最強か？ これからも応援させて頂きます。 頑張って！！ (2021年12月12日 0時) (レス) id: a9aad67263 (このIDを非表示/違反報告)
猫餅 - 体長が体調になっています。>"< (2021年8月11日 20時) (レス) id: 3a7b856aca (このIDを非表示/違反報告)
ぬぬ(プロフ) - 素敵な作品私ありがとうございました。とても面白かったです！ (2021年4月26日 11時) (レス) id: 7168c245e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宙
| 作成日時：2020年12月31日 14時
