やっぱり兄には。 ページ24
･
「…」
お兄ちゃんは何も言わなかった。でも顔を見る勇気はなかった。
頭を下げた状態で、話を続ける。
『今までずっと、お兄ちゃんに嫌われてると思ってました。
…それでバイト先の常連さんだった悟くんに相談に乗ってもらってたんです。』
でも悟くんのせいではない。むしろ悟くんは被害者だ。
彼は純粋に私を好いてくれただけ。私は何も知らずに彼を利用しようとしていたのだから。
涙がこぼれそうになったのをぐっと歯を食いしばって堪える。
今度こそ嫌われるだろうか。
でもこのまま嘘を突き通すのは心苦しい。
所詮自分のためだけにしか動けない自分を情けなく思いながら、私は言葉をなんとか続けた。
『自分のワガママのために悟くんを巻き込んだのは私です。…こんなつまらない嘘をついてごめんなさい。でも、』
「顔を上げてください」
お兄ちゃんが私の言葉を遮った。
声色は怒っていなかった。前のような、優しい声。
そっと顔を上げると、お兄ちゃんの手が私の頬に伸びる。
温かい指がそっと私の目尻に触れる。
こらえていたはずの涙がポロポロとこぼれ落ちていく。
目をそっと開く。お兄ちゃんの指は私の目尻から溢れる涙を拭ってくれていた。
「…知ってましたよ、そのことは。あなた達の嘘を私が見抜けないと思いましたか」
『…え、』
びっくりして目を見開く。お兄ちゃんは呆れたような顔をして私の頭をそっと撫でる。
「あなたとあの人が付き合っているなら、あの人が私に黙って殴られることなんてないんですよ。」
『それはどういう…』
「男の勘とでも言っておきましょう。…でも今回のことはおあいこです。私にも落ち度はありましたから」
そっとお兄ちゃんが頭を下げる。
『！？なんで、』
「あなたに寂しい思いをさせたのは私です。私がもっと強ければ、大人だったら、あなたに勘違いをさせることもなかった。
…中途半端な兄貴面をしてしまった。本当に申し訳ない。」
深く頭を下げられる。
目の前に見える髪。私と同じ淡い金色。
一歩そちらに近づき、首にそっと腕を回す。
『お互い様ですよ、お兄ちゃん。』
お兄ちゃんが少し驚いた気配がする。
「…そうですね。お互い様です」
ぎこちらない動きとともに、お兄ちゃんの腕が私の背中に回る。
10年ぶりの感覚に、気恥ずかしいような、嬉しいような。
どちらともなく笑いがこみ上げた。
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lokiloki - こちらの作品をとても気に入ったのでプレイリストに載せさせてもらいます ※自分の作品を消したい場合はお手数をかけますがプレイリストの 【おもしろ度を投票】の上にある 【リストから削除】からやるか、プレイリストのコメントから作者に言ってください (12月15日 16時) (
レス) @page3 id: 7de4ffbd52 (このIDを非表示/違反報告)
眠民。＿ねむみん。 - 凄く面白いしいい作品でした~!!作者さんってもしかして最強!?これからも応援してます!ステキな作品ありがとうございました!! (11月19日 11時) (レス) @page45 id: 03ba19f866 (このIDを非表示/違反報告)
かけたま - こんなにも面白い作品を生み出すあなたは(^^)最強か？ これからも応援させて頂きます。 頑張って！！ (2021年12月12日 0時) (レス) id: a9aad67263 (このIDを非表示/違反報告)
猫餅 - 体長が体調になっています。>"< (2021年8月11日 20時) (レス) id: 3a7b856aca (このIDを非表示/違反報告)
ぬぬ(プロフ) - 素敵な作品私ありがとうございました。とても面白かったです！ (2021年4月26日 11時) (レス) id: 7168c245e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宙
| 作成日時：2020年12月31日 14時
