経験者はマネージャーに恋をする (ページ1)

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１日目　08：00　始まりの朝ページ1

あたしは、AA。総北高校自転車競技部のマネージャーだ。ま、マネージャーっていっても、三年だから幹ちゃんにゆずることになるんだけど。

「あー、気分が…」
今、一年生の坂道が、バス酔いでダウンしているところを介抱している。なんでこんなに、車酔いがひどいのかなぁ…。
「大丈夫？坂道」
「ホンマ車に弱いな小野田君は」
そうのんきに言うのは、章吉。同じく一年生。
「のんきに言ってないで、手伝いなさいよ」
「ほいほーい」

まったく…。
あたしは、近くの自分の席に戻る。
「僕はロードバイクの経験者ですけど、介抱するのは経験者じゃないんですよ」
照文は、はにかんだ笑顔であたしに言う。そういうところ、かわいいって思っちゃうのよねぇ。不思議なことに。
「ぅふふ。だったら、慣れてもらわないと」
「冗談きついですよ…」

「大丈夫か小野田。遠くを見ると緑のものを見るてのはどうだ？」
俊輔が、坂道と章吉の前の席から顔を出して言った。
「あ、ありがとう…今泉くん…そうしてみるよ…」
「え、だけどこの先、すぐにトンネル入るはずだけど」
「あっ、トンネルに入ってもうた…どこまでツイてへんのや」
本当にかわいそうなほどについてないのよ、坂道は。

「どっかに緑のものあらへんかなー？……」
緑？そういえば、裕介の髪って……。
「あっ！あったで、小野田くん！」
「うぇ？鳴子くん…緑色って…どれのこと？」
「後ろの座席の…、ほら、あれや！」
あたしと坂道は、章吉が小さく指差した方向を見つめる。
「……」
「何ジロジロ見てるっショ！」
やっぱり裕介かい！

「小野田！A！オレの顔に何かついているのか？」
「いいや、なんもついてない」
「いえ、あの、その…すいません…巻島さん」
あー、坂道、しょんぼりしちゃって…。
「すまんかった、小野田くん、あっち見とき！」
「あ…あっちって、どっち？」
「田所のオッサンのほうや！って、うわっ！オッサン、メッチャサンドイッチ食っとる！」
「気持ち悪くなってきた」
「しもた！逆効果やった…」
「もうダメみたい…おぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「ちょ、坂道、吐くなぁぁぁぁぁぁ！！」
「あちゃー、アカンかったか…」