２９０：嵐でいるかぎり 〜J〜 ページ10
姉貴がこうなるのは始めっからわかってて。
だから適当にあしらう。
「で？潤、どうなんだ？」
親には俺の結婚の意思は話してあって、俺がここにAを連れて来たという事の意味を薄々は感じてるはず。
「あぁ。来年中には…どうにかする。」
「そうか…。」
「え？え？どういう事？」
俺と親父を交互に見ている姉貴。
「来年中には…入籍する。」
「え？！あんたって結婚できるの？！」
「できる様に頑張ってる最中。」
まぁ…俺があまりにしつこいからか最初よりは話も聞いてくれる様になった幹部連中。
ちょっとした手応えを感じたから、こうやって実家に連れて来たわけで…。
「びっくりだわ〜。あんたが嵐でいる限りずっと独身だって思ってた。」
「あぁ。俺も思ってた。」
Aはそこまで頑張れるくらいに惚れた相手だって事で。
いずれは結婚するんだろうって思ってたけど、４年前に嵐を選んだ俺には当分先の事だって思ってたし。
まさか３０で自分が結婚を決意するとは思ってなかったな。
「メンバーもわかってくれてる。むしろA為にそうしてやれって雰囲気。」
「彼女の為に…？」
「あぁ。A？…いいか？」
俯き加減のAの顔を覗き込むと、何の事だかわかってるAは力なく微笑んでくれて。
Aも隠しとくのは嫌だって言ってたし、自分で話すと言ったけど、俺が話すと諭した。
「Aは婚約者がいてな？」
「え！二股？ん？不倫？」
驚いて声を上げたのは姉貴だけで。
「ちげぇよ。結婚直前に事故で亡くなったんだ。５年前にな…。」
「そう。」
母さんが悲しそうな目でAを見て。
「辛く悲しい思いをした分幸せにしてやってってメンバーが…な。」
「そうだな。」
「それにその婚約者…大河さんて言うんだけど…俺らのチーフマネージャーの息子さんで。俺にAを託してくれて。だから俺は責任重大なんだ。」
隣に座るAの手をギュッと握り締めた。
「苦労や我慢するのもわかってても俺でいいって言ってくれてる。そのAの気持ちを無駄にしたくない。」
ジッと親父の目を見て言う。
Aには言ってないけど、実は親父はこの話に少し後ろ向きで。
Aが気に入らないとかじゃなくて、俺がこんな仕事だから、Aやご家族に迷惑や苦労を強いるのを申し訳なく思ってて。
「俺だけしかAに幸せを感じさせてやれない。」
自惚れかもしれない。
けど…そう信じてるからこそ頑張れる自分がいるんだ。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年12月21日 16時
