３０９：第一に考える事 ページ29
「おめでとうございます。」
ロッカールームで背後からそう声をかけてくれたのは静香ちゃんで。
「ありがとう。」
「指輪もAさんによく似合ってます。ただ豪華なだけじゃなくて…Aさんに合ったのを選んだって感じです。」
目ざとく薬指を見た静香ちゃんがそう言って。
「ねぇ？静香ちゃん？」
「はい？」
「…後で大事な話があるんだけど…いい？」
なんとなく察しがつくのか、悲しそうな目をしてかろうじて頷いてくれた。
ロッカールームじゃ、誰に聞かれてるかわからないし…。
二人きりになる受付で…いつ切り出そうと思っていると。
「いつですか？」
やっぱり静香ちゃんは気づいてて。
「人事部には１月いっぱいでお願いしようかと思ってる。」
「…そうですか。」
「有給消化あるから…事実上１月中旬までかな。」
「…はい。」
妊娠もしてないのに、今時、専業主婦なんて…思ったけど、会社にももしかしたら迷惑かかるかもしれないし、
『俺…できればAには家にいて欲しい』
って潤くんが言って。
潤くんは不規則な仕事だし、私が仕事をやめない限り二人の時間は取りづらい。
仕事がなければ翌日の仕事を気にする事もなく、深夜帰宅の潤くんのお出迎えができる。
結婚する以上、やっぱり旦那様の事を第一に考えるべきだって思ったし、元々そんな器用じゃない私は両立は無理だ。
…って言うか、無理を重ねていっぱいいっぱいになって結局は潤くんに迷惑をかけるなら、潤くんのお嫁さんとしてすべき事だけを一生懸命しようって思った。
それに…潤くんは直ぐに子供を望んでいて、その為には薬もやめないとならない。
症状が重い私は時折寝込む事もあって、その為に会社を毎月休むのも…。
「静香ちゃん？たまにはランチしたり、うちにも『いいんですか！』」
キラキラ目を輝かせて私を見つめる静香ちゃん。
「うん。もちろん。潤くんそう言ってたわ。」
「行きます！ぜひ行かせてもらいます！」
「うん。待ってる。」
「…Aさん？」
「うん？」
「今度こそ、きっと幸せになれますよ…。」
潤んだ目で言ってくれた静香ちゃん。
「…色々ありがと…ね？」
「いえ。お世話になりっぱなしなのは私の方ですから。」
それだけ言うと潤んだ目を隠す様にファイルを開いて仕事に取り掛かった。
「静香ちゃんの結婚式には呼んでね？」
私もそれだけ言うと返事も聞かずに仕事に取り掛かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 680人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しおなな
| 作成日時：2013年12月21日 16時
