２４０：負けず嫌い 〜J〜 ページ40
今日も俺の上に乗っかるA。
今日はいつもより、じっくり優しく…俺の存在をAに確認させる様に抱いた。
「…なぁ。」
「ん？」
俺の心臓の上にピタッと耳をくっつけてる。
「チーフが…大河さんの親父さんだってマジに知らなかったのか？」
頭を撫でながら聞く。
「うん。芸能事務所勤務だって事は知ってたけど…。私、そういう事に興味なかったから。」
「今でも、然程ねぇだろうが。」
「ふふ。そうだね？」
あっさり認めやがって。
「この五年…早かった様な…長かった様な…。」
「ん？」
「今日の潤くんの授業。時間の授業だったでしょ？」
「あぁ。」
「十年後…私ってどうなってるんだろ？どうありたいんだろ？」
「そんなの決まってる。」
「ん？」
「俺と一緒に…今以上に幸せで…笑ってる。」
「うん。」
俺の胸から顔を上げたAはチュッとキスを落として。
「今でも十分幸せよ？」
ってふんわり微笑みながら言う。
「もっと…大河さんの果たせなかった分も…それに俺も大河さんに負けなくらいの幸せをお前に与えてやりたい。」
「…。」
「俺ってさ？」
「ん？」
「すっげぇ負けず嫌いだから。今まで綺麗事言ってきたけど…ここまできたらやっぱり俺は大河さんに負けたくない。」
勝てるなんて思ってなかった…付き合い始め。
Aが大河さんを忘れられなくても、例え俺だけが好きでも、そばにいて欲しいと願ってた。
それが、どんどんAに対して貪欲になっていって…今では…。
「『どこで勝敗つける？』って言われちまえばそれまでだけど…。」
「ん？」
「…いや…まぁ…いいや。」
言い淀んだ俺を不思議そうに見下ろしている。
気持ちの大きさは比べ様もねぇし…だから…
俺は…大河さんが果たせなかったAとの今も未来も一緒に歩く約束を形にしてみせる。
実際、それで勝てたなんて思ってはねぇし、やっぱ亡くなった人には勝てない。
そもそも直接勝負もできねぇしな。
「…潤くん？」
やっぱり不思議に俺をきょとんと見つめてる。
そんなAの頭と腰をしっかり抱き、身体の上下を入れ替えた。
「俺は…この先もずっと今と変わらず…今以上にお前を愛してくよ？約束する。」
Aの目に薄っすら涙の膜ができて。
潤んだ目尻にそっとキスをする。
「だからお前は俺の腕の中で黙って大人しく俺に愛されてろ…ずっとな。」
涙をキスで拭い…
涙目のAと見つめ合って…
目でキスをねだるAに唇を寄せた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年11月7日 8時
