２０１：今の君が… 〜J〜 ページ1
「…重くない？」
「ちょっと…な。」
昨日からやたら甘えたなAがピッタリくっついて…
『もっとくっつきたい。』
って言うから、抱きしめたまま仰向けになって自分の上に乗っけた。
「でも、いっぱいくっつける…幸せ。」
俺の胸にチュッてして頬ずり…。
「お前さ…。」
「ん？」
「今のお前がホントのお前だとしたら…今までどんだけ我慢してたんだ？」
「ん〜…今までもとりわけ我慢してたわけじゃないけど…。」
無意識にセーブしてたって事か…？
「一ヶ月離れてた所為かな？」
『ふふ…潤くんの音がする』ってピッタリ耳を胸にくっつけて…。
まぁ…俺もこれはこれで嬉しいし、可愛いからいんだけどさ。
「ねぇ…？」
「ん〜？」
Aの髪をクルクル指に巻きつけて遊んでいると…。
「親にね…どう話そうかと思って…。」
「ん？」
「引越し…。引越し先教えないわけにいかないでしょ？」
「…だな。」
俺の方は、親も事務所にも話しはしてある。
本当だったら俺がAの両親に話しをすべきなんだろう。
俺の親にもそう言われた。
『男のあなたがちゃんと女の子のご両親に挨拶すべき。』って…。
ついでに『うちにも一回連れてきなさい。』とも。
いくら俺らがもう３０になるとはいえ、親なら普通はそう思うんだろう。
「…俺がちゃんと挨拶するよ。」
「え！無理でしょ！いいよ！上手く言うから！」
焦った様にバッと俺の胸から顔を上げる。
「そういうわけにはいかねぇだろ？」
「けど…。」
「俺はお前との事で、嘘ついたり誤魔化したりはしたくない。これ以上…お前にコソコソさせたくない。」
今でさえ、窮屈な思いをさせてるのに…自分の親にまで嘘つかせるなんて俺にはできない。
「でもね…今、両親海外で…。」
「あぁ。そう言ってたな。」
「とりあえず、会社には実家の住所で登録して…。」
独り言の様にブツブツ言うA。
「なぁ…お前の実家ってどこなんだ？」
「ん？都内だよ？今は兄夫婦が姪っ子と住んで『お前、兄貴いたんか？！』」
でかい声で言った俺をキョトンと見てる。
「うん。あれ？言ってなかったっけ？」
平然とそう言ったAに、ただただ唖然…。
「ごめんね。言ったつもりだった。」
悪びれるわけでもなくにっこり笑って言うAに言葉も出ない…。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年11月7日 8時
