１６８：ちっぽけなプライド ページ8
なんだかずっとモヤモヤ引っかかってる。
潤くんは別に嘘をついてるわけでもないし、私も潤くんが裏切るような事をするなんて思ってない。
けど…心のどこかに何か引っかかってる。
その何かは…本当はわかってる。
だけど、わからないフリをしてる。
「Aさん、最近元気ないですね？」
「そう？疲れてるのよ。アノ日だし。」
「…そうですか。」
何か言いたげな静香ちゃんだったけど、それ以上聞いてこなかった。
淡々と業務をこなしていく中、受付に鳴り響く電話。
静香ちゃんが対応して電話を切った。
「Aさん？営業部長がお呼びです。」
「…え？私を？」
頷く静香ちゃんに受付を任せて、営業部長の元に向かった。
・・・『今日は友達と呑むから電話できないかも。』
って潤くんからのメールを受信してたけど、今日、営業部長からされた話しをしとくべきだと思って…気が進まないけど電話をかけてみる。
どこで呑んでるのかまではわからないけど、電話に出ない所をみると、騒がしい場所なのか。
できれば今日中に話したい。
時間がない…。
留守番に切り替わり、諦めて切ろうと思った時
ーもしもし？
聞こえたのは…女の人の声…。
ーもしもし？
「…あ、あの…間違えまし『間違ってないわよ？潤の携帯』」
…この声…早希さん？
ーごめんなさいね？今日、潤借りてるの。
明日の朝には返せると思うから。
「…どういう事…でしょうか？」
喉の奥からやっと出た声は、低く掠れてて。
動揺してるのがバレたくない私は必死になってそれを隠す。
私の持ってるちっぽけなプライドだ。
ーん？理解できなかった？案外頭悪いのね？
だから、一晩の相手って事。潤は今ねシャワーよ？代わりましょうか？
「…結構です。」
ーそう？大人になった潤がどういう風に女を抱くのか楽しみよ。
「わ、私は潤くんを信じてますので。私が言いたいのはそれだけです。」
早口でまくし立てる様に言って電話を切った。
手がまだ震えてる…。
「はは。動揺してるのバレバレじゃん。」
私の独り言には、当たり前だけど誰も返してくれない。
『信じてる』と言いながら、信じきれてない自分。
今までは友達と呑んでる最中でも電話をしてきてくれた。
けど…今日は『電話できない』って…。
何が本当で何が嘘なのか…もうそれすらわからなくなって…。
ため息をつきクローゼットを開けた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月21日 11時
