１９６：不安 ページ37
必要な物を取りに一旦自宅へ戻る。
一週間は会社が休みにしてくれた。
…あっちではほぼ休み無かったし…。
何も考えたくなかったから、ちょうどよかったんだけど。
一ヶ月放置の部屋の窓を開けて空気の入れ替えをする。
ふと、テーブルの上に視線を向けると無造作に置かれた紙。
その紙にはおせいじにも綺麗とは言えない字で、
『帰ったら連絡下さい』
『まだ、帰ってない？』
『会いたい』
…などが書いてあって、
『オレはずっと好きだよ。ずっとずっと待ってる』
って一番下に書いてある字は滲んでた。
泣きそうになるのをグッと堪えて、その紙を丁寧に畳んでキャビネットの引き出しにしまった。
航空便で送った荷物を受け取って、洗濯や片付けを始めバタバタしてると鳴る電話。
「はい、潤くん？」
ーあぁ。お前…今どこいんだ？
「うん？家で片付けてる。」
ー…そっか…。なぁ？…ちゃんと…。
そこまで言いかけて『何でもない』って言う潤くん。
潤くんの不安がすごく伝わってきて。
「潤くん？夕飯何食べたい？」
ー…作ってくれんの？
「うん。」
ーAが作ってくれるんなら何でもいい。
「そっか。わかったよ？片付けて荷物持ったら潤くんの部屋に戻るね？」
ーあぁ。風呂も用意しといて？一緒に入る。
「うん。頑張ってね？」
潤くんとの電話を切った。
キャリーバッグとボストンバッグにとりあえず必要な物をつめる。
また明日来て、引越しの準備をしないと…。
家具や電化製品は処分をしないとならないし…その手配もしないと…。
バタバタと動き回るっていると、再び鳴る携帯。
画面を見て…小さくため息をついた。
「…はい。」
ー…バカ。
怒鳴る様な大きな声ではなく、低い淡々とした声。
かえってこっちの方が怖い…。
「はい。すみません。」
ー今日、マスター。
「今日はダメ。」
ー…何でよ？
「…潤くんにご飯作る約束したの。」
ーあんた、親友より男取るの？一ヶ月も嘘つかれてた親友よりも！！
「…それはごめんって。ね？明日美ちゃんの大好きな松潤がね…『松潤がなによ？』」
自業自得とはいえ怖い…。
「ん〜…ちょっとね…元気無くてね？明日でもいい？」
ーあんたズルい！松潤引き合いに出すなんて…。
渋々納得してくれた明日美に、明日奢らされる事を約束させられ電話を切った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月21日 11時
