１９３：甘えた 〜J〜 ページ34
久しぶりに感じるAの視線…。
唇の下を撫でられる感覚…。
そして…夢の中ではけして感じる事ができなかった…
…Aのぬくもりと…
一晩中抱きしめていた証拠の腕が痺れる感覚。
「ふふふ。」
あぁ…夢じゃない…。
俺の腕の中にAがいる…。
「おはよ。潤くん。」
「はよ。」
目を瞑ったままで、そう返事するとチュッと可愛いキスが俺の唇に寄せられて…。
薄っすら目を開けると、微笑むA目の前にいて…。
すっげぇ幸せで…
諦めなくてマジでよかったって思った。
久しぶりに熟睡できて身体も頭もスッキリ目覚めた。
「潤くんからの『おはよう』は？」
「ん？欲しいの？」
微笑み頷くAにチュッとキスを落とす。
そうすると、ギュッと俺に抱きつき胸に頬寄せる。
「なんだ？やけに甘えただな？」
「うん。もうね…色々ウジウジ考えるのやめたの。」
「そっか。いいんじゃね？」
頭を撫でながら、額の少し上にチュッとして、そのまま頬を乗せた。
「いいの？甘やかしてたらつけ上がるかもよ？」
「いいよ、別に。俺にだけだったらな。」
「うん。潤くんだけよ？」
「んならいくらでもどうぞ？」
願ったり叶ったりだよ…。
「…幸せ。」
「なっ。」
「そろそろ起きる？お仕事行くんでしょ？」
「あぁ。」
Aが少し離れると、Aの胸から臍の周りにかけて、無数に散らばる情事の跡が視界に入り。
「…さすがに付けすぎか？」
自嘲的な笑いと共にボソっと言うと『ん？』ってA。
人差し指で、その跡を順番にトントンとしていく。
その指の行方を知ったAの顔が『かー』っと赤くなって上気する。
「…やっぱお前は可愛いなぁ。」
チュッとして身体を起こす。
「俺、シャワー行くけど…Aはどうする？」
「ん〜…後ででいいや。」
「…やっぱお前可愛いくねぇ。」
「どうして？いきなり何でそんなに不機嫌？」
まだ寝ているAが俺を見上げて不思議そうな顔で言う。
「お前…そこは『一緒がいい』って言う所だろうが。」
俺がそう言うと一瞬目を見開いた。
「ふふふ。そんな事で不貞腐れてるの？」
「『そんな事』って…。」
「じゃぁ潤くんは何で『どうする？』って聞いたの？『一緒に行こう』って言わないの？」
そりゃ…お前…。
『一緒に行きたい』って甘えられたいからで…。
「潤くん？今日の夜のお風呂は一緒にゆっくり入ろうね？」
そう言って微笑むAは、結局、俺の思ってる事なんてお見通し。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月21日 11時
