１９２：ぼんやりと ページ33
「ねぇ…本当にこの甘い香りで仕事行ってたの？」
たっぷり入浴剤が入ったお風呂に、潤くんに後ろから抱きしめられながら浸かる。
「あぁ…。香水もつけないでそのまま。夜と朝入ってた。」
「大丈夫だったの？」
「うん？」
「だって…明らかに男性向けの香りじゃない。」
この香りのまま仕事行ってたら…女の影がチラつく。
「大丈夫。メンバーもスタッフも友達も俺に超絶美人の彼女がいるって知ってるよ。」
「『超絶美人』って…。」
大袈裟な…。
あんなに綺麗な人だらけの芸能界で…。
「噂が噂を呼んで…一部では『絶世の美女』呼ばわりだぞ？」
「…もう…本当にやめて？そうそう会う事も無いって言っても…。」
「んな事言ったって…噂してんの俺じゃねぇし…。」
「否定すればいいでしょ？！」
呑気な潤くんにイラッとして、斜め後ろを睨む様に見上げる。
「何で？する必要ないじゃん？本当の事だし。」
さも当たり前かの様に言った潤くんに、ただただ絶句…。
「…なぁ？そんな事はどうでもいいから…。」
「よくない！全然よくない！」
「んな怒んなって。」
クルッと自分の方に私を向ける。
「可愛いお顔が台無しですよ？」
柔らかい微笑みを浮かべて、私の頬をトントンとして、額をコツンと合わせる。
「…なぁ？俺さ？」
「ん？」
そっぽ向いたまま答える。
「クク…機嫌直せよ。」
そう言ってチュッとキスをする潤くん。
「直った？」
「ん…直った。」
『よかった』って微笑み私の頭を自分の首筋に引き寄せた。
「…俺さ？」
「うん？」
「今回の事あって…すげぇ考えて考えて…。」
「ん。」
「…やっとさ？ぼんやりと大河さんの背中見えたよ？」
って…。
それって…つまり…。
「横に並ぶまでには、乗り越えるべき事がたくさんあって…時間もかかると思う。」
お湯で濡れてる手で、頭をゆっくり撫でてくれて。
「…けど、俺の見る未来には絶対お前がいるって事は…そういう事なんだと俺は思ったんだ。」
「…うん。」
「だからこそ必死で探したし、諦めもしなかった。…絶対に戻ってくるって信じてた。…まぁぶっちゃけ怖さもあったけど。」
そう言って苦笑いを浮かべた潤くん。
「…ありがと。」
けど、やっぱり潤くんは真っ直ぐで…。
私を真っ直ぐ思ってくれて…信じてくれて…。
そんな潤くんをもう二度と悲しませたくないって…
それに…私も潤くんに見合う人である為に、怖さに負けない強い人間にならないとって強く思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 425人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月21日 11時
