１８７：おいで？ ページ27
一ヶぶりに見る潤くんの顔は、涙に邪魔されてぼんやりとしか見えなくて。
「…っ…わ、私と『A、ちゃんと俺を見ろ』」
どうして？どうして…そこまでさせるのよ…。
いいじゃない、ちゃんと見てなくても面と向かって言ってる。
「A…。」
「…。」
「A？……おいで？」
目の前に差し出される潤くんの右手。
その手が震えて見えるのは私の涙の所為なのか…。
「大丈夫……おいで？」
どこまでも優しい潤くんの声。
「A…ほら、大丈夫だから…おいで。」
「…っ。」
もう何にも考えられなくて…。
ただただ、潤くんの優しい声に胸を締め付けられて…。
本当は好きで好きで…忘れてるなんて到底できなかった潤くんが目の前にいて…。
この一ヶ月…ずっとずっと、そのぬくもりを求めてて…。
「…A…好きだよ？大好き。」
いつもそう耳元で囁いてくれてた…。
「……おいで？」
「…。」
でも…やっぱり今更…。
「A……愛してる。俺にはお前以外愛せない。お前以外…無理なんだよ…。」
差し出されていた手が、ゆっくりゆっくり私の背中に回る。
「…愛してるよ。」
耳元で切なげに囁く潤くんの黒いシャツにしがみついた。
「…やっと捕まえた…。」
潤くんの腕に力が込められて…。
潤くんの匂いを感じて…。
止まりかけていた涙が更に溢れて、潤くんのシャツを湿らしていく。
「もう…絶対離さない。」
痛いくらいに抱きしめられて…
でも、全く嫌じゃない。
「…ひっ…っじゅ…く…。」
「ん？」
「…っご…ごめ……さぃ。」
「いや…俺も…ごめんな。」
やっぱりどこまでも優しい潤くんは、私の首筋に顔を埋めて大きくため息をついた。
なかなか涙と嗚咽が止まらない私を、腕の力を弱める事なく抱きしめ、頭を撫でてくれてた。
やっと、嗚咽も落ち着いた所で少しだけ身体を離されると、覗き込まれる顔。
目と目がしっかり合うと、
「やっとまともに顔見れた。」
って目を細めて優しく笑った。
「A、もう逃げるのはこれっきりにしろ。逃げても地獄の果てまで潤は追っかけて来るぞ？」
背後でマスターが言うから、そちらは向かずに頷く。
「俺からも是非お願いしたい。」
って苦笑いの櫻井さん。
「…ご迷惑かけて…申し訳ないです。」
「いいよ？きっと近々松潤がお礼してくれるだろうから。」
「あぁ。いくらでも。」
そう言いながら立ち上がった潤くんが手を差し出した。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月21日 11時
