１８５：涙 〜翔〜 ページ25
服で拭ってるのは汗…？
それとも…涙？
肩を上下に揺らして、荒い息のまま視線はAちゃんで。
「…A…。」
小さくそう呟いた後、やっぱり服で顔を拭ってる。
ゆっくり…ゆっくり歩みを進めて、覗き込んでAちゃんの寝顔を見たであろう松潤は…。
今度こそ…涙であろう。
服の袖口で目元を抑えた。
この一ヶ月…探して、探して…。
別れを告られても到底諦められなかった松潤。
『面と向かって別れを言われるまで、俺は絶対諦めない』
そう俺らに宣言してたとはいえ、実際はキツかったと思う。
その証拠に…涙を拭いきれなくて頬を伝ってる。
「…翔。」
「…いや…大丈夫。」
松潤の気持ちが痛いほどわかる俺は…思わずもらい泣きしてまう。
恐る恐る手を伸ばした先はAちゃんの頭。
「…っ。」
やっと触れれた事の喜びなのか、松潤の目からはとめどなく涙が溢れて。
「…潤。」
そんな松潤にマスターが静かに声をかける。
溢れ出る涙を全く拭おうともせずに、手はAちゃんに触れたままでマスターを見る。
「その我儘娘…早く引き取ってくれよ。うちの酒呑み干されちまうわ。」
「…ぃいの？俺でいいの？」
「…お前…いらねぇのか？いらねぇなら『やんねぇよ。絶対誰にもやんねぇ』」
「…そうか。」
満足そうににこやかに笑ったマスター。
彼はAちゃんの元婚約者の事もよく知っていて…Aちゃんとっては父親に近い存在。
そんな彼に認められている松潤。
服の袖口で、顔中を拭うと俺の元にやって来る。
「翔くん。ありがとう。」
「お礼を言うのはまだ早いんじゃねぇの？」
「あぁ。けど…会えた。諦めなくてよかった。」
「…松潤？」
「うん？」
「明日には、いい報告聞けるよな？」
「あぁ。必ず。約束する。」
真っ直ぐに俺を見て言う松潤は、やっぱり松潤で。
「やっぱり松本潤って…かっけぇな。」
「おい！空気読めよ！」
…コントじゃねぇんだからさ。
「せっかくの集まりに…ご迷惑かけて申し訳ありませんでした。」
俺の友人に深々頭を下げて、クルッと身を翻してAちゃんの元に歩いてく。
「A、A！お前の王子様がお迎え来てくれたぞ？起きろ。」
マスターがAちゃんの身体を揺すって起こす。
「ん〜…マスター…？」
「迎えだ迎え。」
「ふふ。大河？私もうあっちの世界？」
「んな訳あるか。『A…』」
松潤の声にビクッと身体を震わせた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月21日 11時
