１８４：濃いイケメン 〜翔〜 ページ24
席に戻り、マスターを呼んだ。
視界の端でAちゃんが帰り支度をしているのが見えた。
「…Aちゃん上手く引き止めて。…強い酒で潰して。あれだけ回ってれば直ぐ潰れる。」
酒を頼むフリをして、そうボソボソ耳元で言うと、俺のしようとしている事が理解できたのか、頷くマスター。
マスターがカウンターに戻るのを見届けると、
「…翔？」
って遠慮がちな友人の声。
「あぁ。ちょっと待って。俺、電話。」
携帯を持ち外に出た。
３コールで出た相手の声は…やっぱり沈んでて。
「…俺。」
ーはは。わかるよ。表示出てるし。オレオレ詐欺でもしようとしてるの？
言っとくけど、俺、金無いよ？(笑)ニノにしなよ。
無意味に精一杯明るい自分でいようと頑張ってるのが痛々しい。
「…なぁ…俺見つけたぞ？」
ーは？何を？
「…松潤の一番大事なモノ。」
電話の向こうで息を飲む音がして『…A』って小さく呟いた。
「…はは。すげぇな。それだけのヒントでわかるんだ。」
ーあぁ。俺、Aより大事なモンなんてねぇし。…てか！どこ？どこにいるんだよ！
「落ち着けって…あのマスターの店『直ぐ行くから、A引き止めといて！』」
乱暴に切られたのであろう電話は、直ぐに『プープー』という音に切り替わった。
携帯を持ち、そのまま戻ろうとしたけど…
『うちの末っ子…大事なモン取り戻せるよ』
確信を持って三人に一斉送信した。
「…翔？」
店に戻ると心配そうな友人の視線。
「あぁ。ごめん。てかな？彼女は諦めろ。」
「てか…翔…知り合い？芸能人だったのか。」
「まぁ…納得。」
頷き合う二人に、
「いや…普通のOLさん。でも…うちの濃いイケメンの大事な大事な人。」
って伝えると目を見開く。
「おい、マジかよ…。」
「よかったな…声かけなくて。殺されてたかもしれないぞ。」
松潤…どんなイメージよ(笑)
「てか…潰れ…た？」
俺の背後側にいるAちゃんは、俺からは見えない。
「…わざと潰したんだよ。」
飴色のグラスを持ち上げて、二口呑む。
「…なんかあったのか？」
「ん？ん〜？」
「もったいぶりやがって。」
「はは。ちょっとな…すれ違っちゃったんだよ。でも…ちゃんと王子様が迎えに来るよ。」
「…そうか。」
それからは、Aちゃんの事には触れずお互いの近況を話したり、また旅行に行こうと話していたら、ドアが開く音がして。
ドアに視線を向けると、肩で息をする松潤が立っていた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月21日 11時
