１８３：嘘か真実 〜翔〜 ページ23
こじんまりとした隠れ家的な雰囲気が気に入って、友人と会うのにも何回か使わせてもらってる店。
…松潤とAちゃんが出会った店。
仕事が押して、少し遅れた俺を大分酒の進んだ友人二人が迎えてくれた。
俺の分の酒を頼むと、なぜだか俺を見て眉を下げたマスター。
「なぁ…翔に頼まねぇ？」
マスターも気になったけど、挨拶も乾杯もそこそこに突然目の前で始まる会議。
「仮にもスーパーアイドルだぞ？堕とせても後が大変じゃね？」
「まぁ…そっか…。」
「んだよ？何の話し？」
「あ、いや…な？カウンターの一番端に座ってる女がめちゃくちゃいい女なんだよ。」
そう言われて、カウンターに視線を向けるけど誰もいなくて…。
「誰もいねぇじゃん。」
「今は…トイレ？」
「てかな？さすがに俺はナンパは無理だぞ？」
「でも！マジでいい女だぞ？お前別れたんだったら…『おい、来たぞ！』」
小声でそう言って、俺の腕を肘で突っつく。
「…。」
「なぁ。マジでいい女だろ？さすがの櫻井翔も声も出ない程見惚れるか？」
小声で面白そうに言う友人の話しは耳から耳へ素通りで。
ゆっくり席を立つと、カウンターに座る彼女の元に歩みを進めた。
「え？…翔…マジで？」
戸惑う友人の声を背後に聞いて、
「ねぇ、おねぇさん？俺とちょっとお話しない？」
って話しかけると、ゆっくり顔を上げて俺を視界に捉えた。
結構酒が回ってるのか、潤んだ赤い目を見開き、俺を凝視する。
「…彼氏一ヶ月も放ったらかしで、自分だけ酒盛り？いい御身分ですね？」
「…櫻井さんには…関係ないでしょ？それにもう彼じゃないし。」
「あっちはそうは思ってないけど？」
「それこそ関係ない。」
このコ…こんなコだった？
こんな冷めた淡々とした口調で話すコだった？
「んじゃさ？もうその気が無いなら、きっぱり別れてやってよ。」
「私はちゃんと『別れたい』って言いましたよ？」
「Aちゃんは…それでいいの？」
「えぇ。最初っから無理だったのよ。」
紫色のカクテルが入ってるグラスを、泣きそうな目でジッと見つめてる。
「…じゃぁ…何で？何で、そのネックレスも…カクテルだって…。」
「…たまたま。」
「嘘を吐くなよ。本当はまだ『嘘か真実かなんて、他人のあなたにわかるの？』」
立っている俺を鋭い目で睨む様に見上げる。
「…これでいいのよ。これで。」
それはAちゃんが自分に言い聞かせてる様だった。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月21日 11時
