１７８：『今』 〜ニノ〜 ページ18
元気の無い明日美が出迎えてくれる。
「今日も…手掛かりなかった…。」
泣きそうな沈んだ声で、そうボソっと言った。
そんな明日美の手を引きワンルームのベッドの上に座り、明日美も隣に座らせて肩を抱く。
「そっか。大丈夫。きっと見つかるよ。」
そんな確証なんてどこにもないのに…
そう言うしかないんだ…。
「ね？和也？A平気だよね？大河さんの所になんて行って『明日美！』」
大きな声で遮って、明日美を落ち着かせる。
「大丈夫、大丈夫だから。部屋もそのままだし、きっと帰って来る。」
背中を撫でてやると、かろうじて頷いた。
「それにな？翔さんが…そんな直ぐに会社ってやめられないんじゃないかって…。」
俺らはその辺りの詳しい事情はよくわからない。
「普通は、１、２ヶ月…前もって言うもんじゃないのかって…。」
「うん。手続きとかもあるし…。けど、有給消化とかもあって…。」
「大丈夫だよ…な？」
泣きそうな明日美を抱きしめて、そう言ってあげる事しかできない不甲斐ない自分。
可能な限りここに来て抱きしめてやるしかできない自分…。
周りをこんなに巻き込んで…悲しませて…泣かせてるAさんを恨めしく思う自分…。
「和也…？」
「うん？」
「Aを責めないでね？」
そんな俺の全てをちゃんとわかってる明日美。
「あぁ。そんな事したらJにぶっ殺されるよ。」
笑いながら冗談混じりに言うと、
「うん。そうだよ。松潤、Aを溺愛だしね？」
って返してくれて。
「…松潤…平気？」
「あぁ。表面上はそう取り繕ってるよ。けど…俺ら四人には無理してるってバレバレ。」
「んもぉ。見つけたらAを怒ってやんなきゃね？私の松潤イジメないでって。」
「…だな。『私の』って所は今日は聞かなかった事にしてやるよ。」
「まぁ、和くんって、なんて心が広いんでしょ？」
「いつでもそうでしょうが。」
俺の腕の中で『クスクス』笑う明日美。
「…ねぇ…松潤…見つかるまでA待っててくれるかな？」
「あぁ。多分…見つかるまで追っかけるだろうな。」
「Aには…彼が必要なはずなの。ずっと一緒だった私にはわかるの…。」
「JもAさんじゃなきゃダメなんだよ…。」
ねぇ…Aさん？
大切なのは過去でも未来でもないんじゃない？
『今』なんじゃないの？
過去は今に繋がってるけど…未来は変えられるんだ。
『今』大事なのは…Jと一緒にいる時間じゃないの？
きっと…わかってるよね？
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月21日 11時
