１７７：ハート 〜J〜 ページ17
そうは宣言してもだ…。
探すアテもないし…
街中を表立って探す事が出来ない俺は、空いた時間に車を走らせたり、路駐して道行く人の波の中にAを探すだけ…。
あとは…
マスターの店に通うくらいで。
ニノの彼女に聞いたAの実家って言うか両親は今海外だそうで…。
でも、彼女曰く親に心配かけるのを一番嫌うAは絶対に両親の元にはいかないだろうと言っていた。
って事は…まどかさん？
彼女も今はニューヨークらしく、『辞めた人間がどこ行ったかなんて会社は把握してない』って言われたらしい…。
でも…でも…きっと会えるってどっかで確信してる俺もいて。
Aを探している時に、偶然見つけた小さな雑貨屋。
Aの好きそうな外観に惹かれて入ってみた。
オシャレな外観から想像もできない程、中はごちゃごちゃしてて、正直何がどこにあるのかなんてわからない。
商品を並べてある棚も、キャンドルの横にキーホルダー…。
ぬいぐるみの横に灰皿…。
出よう…。
そう思って出口に向かう途中で、赤とピンクのハート柄の可愛いマグカップが視界に入った。
思わず手に取ってみる。
取っ手もハートがモチーフになっていて…。
一種の願掛けのつもりでそれを持ちレジに向かった。
食器棚の中に俺のグレーのマグカップ。
その隣に並ぶハートのマグカップ…。
いつか絶対にAがこれを使う日が来る。
そう自分もAも信じて今日も俺は食器棚の扉を閉めて仕事に向かう。
移動車の中では携帯に残るAの手紙を読み返すのが日課。
『潤くんへ
早いもので出会ってもう半年が過ぎたね。
潤くんと過ごす時間はとっても幸せだから、時間の流れが早いのかな？
今日はバレンタインだね？
だから私も告白しようと思います。
潤くん大好きです。
これからも潤くんと一緒なら幸せな時間を過ごせると思ってます。 A』
なぁ…俺もA以外とは幸せなんて感じらんねぇんだよ…。
大きくついたため息は、寂しや苦しさまでも吐き出す事なんて出来ずに、ただ車内に響くだけ…。
「…松本さん？…まだ…。」
「あぁ。んとにどこ行ったんだろうな。」
独り言の様に言って外を見て、流れる景色の中にAを探す。
「…大丈夫ですか…って大丈夫なわけないですよね？」
「いや。大丈夫。俺もあの頃よりも多少は成長したよ。すべき事はちゃんとする。」
Aがどこかで見ていてくれてる事を信じて…。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月21日 11時
