１７１：嘘 ページ11
静香ちゃんに取り敢えずの引き継ぎをする。
「あとは…。」
「Aさん、あとは平気ですので心配しないで下さい。」
「そうね、静香ちゃんなら大丈夫ね。」
私がそう言うと笑顔で頷いてくれる。
「あとね…個人的な事になるんだけど…いいかな？」
「…はい？」
不思議そうな顔で私を見る静香ちゃんに、お願い事を一つした。
「Aさん？それでいいんですか？」
「…いいのよ。昨日一晩考えて考えて出した答えだから…。」
眉を下げた静香ちゃんは今にも泣き出しそうで。
背中をポンポンと叩くと頷いてくれた。
・・・キャリーバックを引きキョロキョロしながら、その場所を探す。
人が多いこの場所で人気ない所を探すの方のが困難だけど…。
比較的、人も少なく騒音も無さげなその場所で携帯を取り出した。
事前の準備はできている。
潤くんは仕事かもしれない…。
直接口で伝えたかったけど、そしたらしょうがない…メールで…。
目をギュッと瞑って、深く息を吸い込み…吐き出すと、携帯を操作した。
『プルルル』と５回呼び出し音がなった所で…呼び出し音が切れる。
ーA？どうした？
いつもの優しい声…。
「…潤くん？」
ーうん？どうした？
いつもの優しい問いかけ…。
「…話しが…ね？…あるの。」
声が…震える…。
ーん？何？俺もさ、Aに丁度話しがあって今家に向かって『…別れよ』
涙がこぼれ落ちない様にギュッとキツく目を瞑った。
ーえ？は？何？
「…別れて下さい。」
ーは？え？！どういう事？どういう事だよ！A？！
「…ごめんね。」
そう言うと電源ごと携帯を切る。
その携帯を胸の前でギュッと握って、目を瞑ってもこぼれ落ちる涙が止まるのを待つけれど…。
止まるなんて事は無くて…。
バックから出したハンカチで涙を拭き、キャリーバックを引きながら歩き出す。
…潤くん
…ごめんね…
たくさんの愛情をありがとう
逃げてばかりの弱い私でごめんね…？
………大好き…だった…よ…
『だった』…。
自分にも潤くんにも嘘をついたまま…
私はまた逃げ出した。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月21日 11時
