１６２：帰せない 〜J〜 ページ2
不完全燃焼の身体の熱と…
Aの気持ちが見えないはがゆさ…
冷静になろうと焦る気持ち…
それらを抑える為に、頭から冷水を被る。
一体…Aはどうしたってんだ？
今日のあの場で何かあったのか？
…ただ、気疲れしてるだけか？
どんなに俺がAに言葉で…身体で…思いを伝えても一向に俺を見ようとしないA。
今まで…こんな事はなかった。
圧倒的に俺のが『好きだ』と言葉で伝えて…Aは言葉は無くとも、
微笑みで…
俺を抱きしめる腕で…
キスに応えてくれる唇で…
それを伝えてくれて。
この時間だけは、間違いなくAは俺だけを見ててくれてたはず…なのに…。
「はぁー。」
無意識に出たため息は、胸の奥に燻ってる気持ちまで吐き出してはくれず。
もう一度、小さくため息をついてシャワーを止めた。
下着と部屋着のパンツだけ履いて、洗面所のドアを開けると、目の前にはA。
お互いびっくりして、目を見開き、しばらく見つめ合った。
「…あ、あの…今日は帰る…ね。」
気まずぞうに、俯きながらボソボソ言うAはもう帰る格好で手にはバック。
玄関に向かう途中だったのか…。
「…なんで？なんで帰る必要がある？」
「え？だって…。」
「ヤレなきゃ帰す男だとでも思ってんの？」
俺の中のやり切れない思いが溢れ出て…キツく冷たくAに…当たってしまう。
「ち、ちが『お前…何？何がしたい？』」
たかだか一度、行為を中断したぐらいで…。
こんなになる俺が…マジで…イヤだ。
Aは本当に疲れてただけで、無理に俺に付き合ってくれてたのかもしれない。
「…ごめ…ごめんなさい…。」
Aの涙声で…ハッとしてやっと少し冷静になってきた。
「いや…ごめん…。俺が言い過ぎた…。」
俯き首を振るAの、細い手首を掴む。
「…帰らないで。」
「…。」
「帰るなよ。…てか帰さねぇ。」
Aの手首を掴んだまま、足早に寝室に向かう。
「ちょ…潤くん…。」
焦るAをベットに放り投げて、その上に乗っかり服を脱がして、ベットの下に落としていく。
「潤くん！」
ジタバタするAを無視して、力で抑えつけて下着姿にする。
「やめ…やめて…潤くん。」
本格的に泣き出したAを抱き上げて、布団を蹴り飛ばした。
もう抵抗もせず、ただただ静かに涙を流すAをベットに下ろし、その上に布団をかけた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月21日 11時
