１３０：ムード ページ10
シャンパン味のキスを繰り返して、ゆっくり唇を離した潤くんが、ジッと私の目を見つめる。
「…潤くん？」
ソファから立ち上がったと思ったら、いきなり私を抱き上げた。
「潤くん？！」
「…先にベットでもいい？」
「え？！」
「風呂後でもいい？」
私に聞いときながら、潤くんの足は既に寝室に向かってて。
「もぉ！潤くん！」
「キスしてたら我慢できなくなった。」
平然と言う潤くんは、
「A、ドア開けて？」
って甘く囁く。
躊躇している私に、
「早かれ遅かれどっちにしろするんだから、観念してドア開けて。」
って…。
「もぉ！」
ムードのへったくりもなくそう言った潤くんの首筋にドアも開けずにしがみつく。
「クク。何？抵抗してるって事？」
「…。」
「俺はお前とできれば、別に風呂場でもソファでも床でもいいけど？」
「なっ//」
なんて事を平気で…。
言葉も出ない私を『ククク』って笑う声が聞こえる。
「なぁ…A？」
「…。」
ふん。返事なんてしない。
私をからかって遊んでるんだ。
「A？」
「…。」
「Aちゃん？」
「…。」
「Aさん？」
「…。」
返事をしない私を、ゆっくり下ろした。
「面倒くせぇから、自分で開ける。」
面倒くさい？！
ちょっと！！
プイとしてリビングに戻ろうとする私の腕を咄嗟に掴む潤くん。
「逃がさねぇよ。」
「イヤ！今日はイヤ！」
「…スネやがった。」
本当に面倒くさそうにボソっと言った潤くん。
「ひどい！今日の潤くんひどい！」
「…どこが？」
「優しくない！ムードもない！」
「今から優しく抱いてやるっつてんじゃん。」
「もう！！帰る！！」
手を振り払おうと、手を引っ張ったり振ったりすけど…。
潤くんの力には敵わない。
「帰すと思ってんの？」
潤くんとは視線を合わさない様に顔を背ける。
「Aの不安が少しでも無くなる様に…一番近い所で俺を感じさせてやるから…おいで。」
ずるい…。
耳元で甘い言葉を囁く潤くん。
ゆっくり顔を潤くんに向けると、優しく微笑んでいて。
「ほら、おいで？」
私の手を掴んでない方の腕を広げる。
「A…おいで？」
そろそろと手を差し出すと、素早く引っ張られ潤くんの腕の中。
「…なぁ。俺の不安も取り除いてよ…。」
「…ん？」
「言っただろ？俺だって不安でいっぱいだって。」
「…うん。」
返事をした私を抱き上げ寝室に踏み入れた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月5日 16時
