１２９：大事な人 〜J〜 ページ9
ソファに並んで座り、Aの肩を抱きながらケーキとシャンパン。
「潤くん？」
「…ん〜？」
Aの髪を指にクルクルと巻きつけて遊んでいると不意に呼ばれた名前。
「…怖かった。」
「…。何が？」
「水田さんに潤くんとの関係バレた時…。もう潤くんと一緒にいられないって思ってすごく怖かった。」
身体ごとAに向けた俺の二の腕をギュッと掴みしがみつくA。
「…大河を失って…潤くんまで…。そう思ったら足が震えた。」
「…そっか。」
Aを抱き寄せて、頭の上に顎を乗っけた。
「アイツは何で？」
「…。」
黙り込むAに『大丈夫』と背中をポンポンって叩く。
「…調べたって…。」
「ん？A？」
「…私の部屋…『調べた』って…。」
「…。」
社内名簿かなんかがあるのか？
普通の会社の仕組みをよく知らいない俺は、その位しか思い浮かばなくて。
「それでね？私の部屋から潤くんが出て来たって…。」
「…。」
俺がAの部屋に通ってた時か…？
あの時はとにかくAに会いたくて必死で…警戒心薄れてたかも…。
「…ごめん。俺が悪かったな。」
「ううん。けど…。」
「…うん？」
「…もうあんまり…。」
やっぱり…。
Aが言いたい事も直ぐにわかって。
「無理。」
「けど！」
「お前に会う時間が減るなんて俺には無理だ。」
今でさえ不規則なのに…。
「…私…会う時間が減っても…全く会えなくなるよりはいいって思って…。」
「…うん。Aの気持ちはわかるよ？」
俺だってそうだ。
「…なら…。」
「俺ももっと気をつけるから。な？」
「…。」
「A…？いいよ？言いたい事は言って？何でも話すって決めたよね？」
どんな些細な事でもAの事は知ってたい。
Aの不安は取り除きたい。
「…も…大事な人を…失うのは…イヤなの…。
怖いの…。」
大河さんを突然失った事に対するAのトラウマは相当で。
「うん。そうだね。」
適当な事は言えなくて…ただただ同意して安心させるしかできない。
「A？」
「…。」
「なぁ…A？」
「うん？」
「ありがとう。」
「…えっ？」
俺が突拍子もなくお礼を言ったからか、パッと顔を上げた。
「俺も、『大事な人』って言ってくれてありがとう。」
「…。」
「俺にとって何よりも大事なAを傷つけない様に俺もちゃんとするから…だから…な？」
「…ん。」
「大丈夫。俺を信じて？」
頷くAにキスを落とした。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月5日 16時
