１２６：八つ当たり 〜J〜 ページ6
そんなつもりじゃない。
ただの…嫉妬…。
Aにああいう事をしてあげられない自分に腹が立った…イラついた。
その怒りの矛先をAに向けてしまった…。
単なる八つ当たり…。
情けねぇ…自分の嫉妬心からAに八つ当たりして…挙句泣かせるなんて…。
情けなさ過ぎる自分に泣けてきそうだ。
「…ごめん、ごめんA。俺の言い方が悪かった。」
「…ぅっ。」
声を押し殺して泣くAをキツく抱きしめる。
「俺も…俺もな？お前が隣にいてくれるだけでいいんだ。お前が笑っていてくれるなら、それが俺にとって一番の幸せだし。」
「…ん。」
「俺、アイツが羨ましかったんだと思う。俺にできない事を普通にAにしてあげられて。それに…そっちがいいって言わるんじゃないかって怖かった。」
そう…その恐怖心は常に俺の中にあって。
Aがいつか誰かに持ってかれるんじゃないかって不安で不安で…。
Aの事を信じてないわけじゃない。
それとはまた別なんだ…。
「…じゅ…く…？」
「ん？」
「…すき。」
「うん。ちゃんとわかってる。ごめんな？」
首を横に振るAが泣き止むのを抱きしめたまま待った。
家に着いて、涙で顔がぐしゃぐしゃなAを先に風呂に促した。
俺はその間に今日Aをうちに連れて来た本来の目的を成し遂げる為の準備に取り掛かる。
大抵は昼間のうちに終わってるから、あとは仕上げだけ。
部屋の中を忙しく歩き回っていると、ガチャッとリビングのドアが開く音がしたから、リモコンでリビングの電気を消した。
「…潤くん？」
「A、ちょっとこっち来て。」
キャンドルの灯りだけ薄暗いリビングを、ゆっくり歩くAの足音が聞こえる。
「…ここ座って。」
俺の隣をポンポンと叩く。
「うん…。」
少しずつ目も慣れてきて、戸惑ってるA様子がわかる。
「ちょっと待って？」
ライターで数字のキャンドルに火を着けて、テーブルの下からガサガサ音を立てて、それを取り出した。
「A…遅れちゃたけど…誕生日おめでとう。」
花束をAに差し出すと、まだ状況が理解できてないのか、きょとんと俺を見上げてる。
「これ…。」
差し出した花束をAの胸に押し付ける。
「…あ、ありがと。」
「ううん。当日じゃなくてごめんな？来年こそはちゃんと当日祝うから。」
「…ん。」
「はは。泣く事ないじゃんか。」
花束ごとAを抱き寄せた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2013年10月5日 16時
